子宮頸がんは、がんの進み具合やがんの部位、年齢、合併症の有無によって治療法を決定します
- 手術療法
- 放射線療法
- 化学療法(抗がん剤による治療)
子宮頸がんのステージ
子宮頸がんの進行は、がん細胞が子宮頸部の粘膜上皮にとどまっている状態の「0期」(上皮内がん)から、子宮のまわりの臓器や他の臓器にまで転移する「IV」期まで、段階によって分類されます。子宮頸がんの病期(ステージ)
Ia2期以降になると子宮の全摘出を行なう必要があり、II期では卵巣や卵管も含めて子宮を全て取り除く広汎子宮全摘という手術が必要になります。また、さらにがんが進行した場合、放射線治療や化学療法が行われます。
「子宮頸がんの検診結果=がんのステージ」ではない
子宮頸がん検診の結果を、子宮頸がんのステージと勘違いして心配される方は少なくありません。検診結果で示される数字は、がんのステージとは別のものなので、注意が必要です。子宮頚がん検診の結果は、5 段階の「クラス分類」で示されます。クラス4は上皮内がん、クラス5は子宮頸がんを想定しているのですが、実際にはクラス3で異常を指摘される方が多いです。クラス3の場合、ほとんどはがんではなく、がんと正常の境界病変で自然に消える可能性のある「異形成」という状態ですのでこのことを説明すると安心されます。
ただし、平成21年度からクラス分類はベセスダシステムという様式に改定されることになっていますので、このような勘違いは今後少なくなっていくと思われます。
ごく初期までの子宮頸がん治療:円錐切除術
前がん病変やごく初期の子宮頸がんであれば、子宮頸部の異常な組織を取り除く「円錐切除術」のみで治療が可能です。これは、子宮頸部をレーザーや高周波メス(電気メス)で円錐状に切りとる手術。手術時間は一般的には5~10分程度で、2泊3日程度の入院で行われますが、日帰り手術で行っている施設もあります。円錐切除術では子宮を摘出しないため、術後も妊娠・出産が可能です。しかし、頸部が切除されるため子宮口が広がりやすくなり、流産の危険性がわずかですが高くなります。
なお、円錐切除術で切り取った組織を詳しく検査した結果、進行した子宮頸がんであることがわかった場合には、子宮を摘出する手術など、より積極的な治療が必要になることがあります。
Ia1期の子宮頸がん治療:単純子宮全摘術
がんが子宮頸部の表面(上皮)を超えて広がっている場合には、原則として子宮の摘出が必要となります。Ia1期までのごく初期の子宮頸がんの場合には子宮だけを摘出する単純子宮全摘出術が行われます。閉経後の人では卵巣も一緒に摘出する場合もあります。開腹して行う方法(腹式)と、膣から摘出を行う方法(膣式)がありますが、腹式の方が確実性が高いため通常は腹式。上皮内がんの場合には膣式で行われることもあります。膣式は傷跡が小さく、術後の開腹も早くなるメリットがあります。
Ia2、Ib、II期の子宮頸がん治療:広汎子宮全摘出術
Ia2、Ib、II期の子宮頚がんの場合、子宮とともに膣や卵巣、卵管など周囲の組織も広い範囲で摘出する広汎子宮全摘出術が必要になります。がんがリンパ節にも転移している危険性が高いため、骨盤内のリンパ節も同時に摘出します。最近では開腹せず、内視鏡下で子宮やリンパ節を切除できるようになってきています。内視鏡手術の特徴は、身体への侵襲が少なく、入院期間が短いことです。一方で、この手術の場合は、膀胱や直腸の神経切断により、排尿や排便をコントロールできなくなることが高頻度に起こり、問題点と言えます。その多くは一過性のものですが、時には永続的に排尿や排便の障害をきたしQOLを損なうことがあります。
子宮頸がんに対する放射線療法
放射線療法は高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す治療方法。欧米では比較的早期の子宮頸がんに対しても放射線療法を行うことが主流になっていますが、日本ではIII~IV期で手術ができない場合、または再発した場合などに行うことが一般的になっています。放射線は体外から放射線を照射する外照射と子宮内に放射線源を入れて照射する腔内照射があり、組み合わせて行うこともあります。また、広汎子宮全摘出術や骨盤内臓全的手術など大きな手術後にがんが残っている可能性があるため放射線療法が行われることがあります。
放射線治療の副作用は、下痢や食欲不振など。また直腸の炎症による出血がみられることもあります。
子宮頸がんに対する化学療法・抗がん剤療法
子宮頸がんが遠隔転移などのために外科療法で切除しきれない場合や、手術後にがんが再発した場合には化学療法(抗がん剤)による治療を行います。また、手術の前にがんを小さくすることを目的に抗がん剤を使用したり、放射線療法の効果を高めるために放射線療法と化学療法を同時に行ったりすることもあります。