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エリート検察官の逮捕について(2ページ目)

現役のエリート検察官が証拠改ざんの罪で逮捕されるというニュースは衝撃でした。さらに、元特捜部長までもが犯人隠避罪で逮捕される始末。検察を揺るがすこの大事件について考えてみました。

酒井 将

執筆者:酒井 将

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上司は何罪が問題になるか?

今回の問題行為が証拠変造罪にあたるのであれば、上司は「罰金以上の刑にあたる罪を犯した者」を捕まえずに逃がした可能性があり、もし本当だとすると刑法103条の犯人隠避罪(はんにんいんぴざい)が問題となります。ちなみに、犯人に場所を提供してかくまう行為は「蔵匿」(ぞうとく)といい、それ以外の行為で犯人を逃がす行為を「隠避」といいます。

ここでは、(1)上司は見逃しただけで、特に積極的なことをしていないのであれば、「隠避」行為をしたといえるのかが一応の問題となりえます。例えば、犯人が逃走しているところを目撃した一般市民が、その犯人を捕まえずに、怖くて見てみぬふりをしたとしても、犯罪とするのは厳しすぎるでしょう。しかし、今回の件では上司は一般人と異なり検察官で、捕まえたり告発したりする義務のある立場の人ですから、見逃しただけであっても犯罪行為とされる余地は出てきます。

やはり、ここでも一番重要なのは、(2)故意があったのかどうかです。ここでは、当の本人が意図的に故意にFDの内容を書き換えたということを報告で知っていたのか、そしてそれを隠したのかどうかが問題となります。主観の問題ですから、本人が否定する場合には捜査機関側は犯罪の証明が難しくなってくるのです。ここでも、当時の本人の同僚への発言や、態度、その後の行動が不自然でなかったのかなど、様々な情況証拠によって犯罪が証明されなければならなくなり、その意味で上司についても立件するには一定のハードルがあるでしょう。
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