ヨーロッパの薬局でも店内にサプリメントがたくさん並んでいます
皆さんにも健康のために摂っているお気に入りのサプリメントはありませんか? 店頭にはたくさんのサプリが並んでいますが、正しい情報が届いていないこともあります。糖尿病に限らず言えることですが、サプリメントを選ぶときには、下記ような「根拠なき思い込み」をしないよう、注意しましょう。
「自然の物を選べば安全」とは限らない
「自然の物だから安全だ!」 自然派志向は説得力がありますが、自然=安全とはとても言えません。秋の風物詩であるキノコには毒キノコが混ざることもありますし、かのソクラテスがあおった毒杯は地中海沿岸のドクニンジンでした。ミステリー小説の殺人事件にはトリカブトの根やチョウセンアサガオがよく登場します。薬草だって薬と毒はまさに紙一重で、極端な言い方をすると、品質管理の行き届いた化学物質の一般の薬の方が、自然を謳う粗悪品より、よほど安全なことすらあるのです。同じ名の薬草でも、産地や年度によって成分のバラツキがあります。猛暑や降雨量でも成分が変化しますし、さらに薬草には薬効成分以外にもいろいろな物質が含まれていて、副作用や他の薬との干渉、アレルギーの源になることもありますから、「自然」ということを過大評価してはいけません。有害な化学物質が身体に悪いのはもちろんですが、「自然」という言葉だけで妄信的に製品を信じるのもよくありません。
法律があるから、広告効果は全て真実?
「サプリメントの広告に書いてあるご利益は本当に違いない! もし事実と異なるのなら、お役所が販売を許すはずがない」と思っているとしたら要注意。サプリメントを含む健康食品は、薬ではありません。「補助食品」です。補助食品には効能を表示することはできませんが、これは裏を返せば、販売会社としては薬のように効能を科学的に証明する義務はないことになります。そのため、販売会社が何かに効果があると受け取れるような売り出し方をしてしまうこともあります。
中身の有効成分はどのくらいか、別の植物は混入していないか、農薬の使用量はどれくらいか、重金属はは含まれていないか? 発売禁止になるのはほとんどが問題が起きてから。少しでも怪しいと思う商品に無理に手を出す必要はありません。
個人的な体験談こそ、効果の証明?
テレビでは、よく有名人がサプリメントの宣伝をしていますね。あれはよく見ると個人の意見だという但し書きがついています。製薬会社が薬を開発するときは、まず安全を十分に確かめてから、無作為に選んだ多数の人にその薬とプラセボ(偽薬)を本人も医師も分からないように与え、統計的に明らかに効果があることを証明しなくてはなりません。だから新薬の開発には年月と巨額のお金がかかるのです。個人的な体験、感想があるからよいサプリメントだと判断するのは危険。医師がただのブドウ糖を薬として与えたときでも、患者の痛みが軽減することはよくあります。これは「プラセボ効果」ですが、サプリメントでも同様のことが起こります。信頼できる個人の体験談は、一つの目安にはなりますが、効果を保障するものではありません。
科学的に根拠がなくても、歴史が証明していれば大丈夫?
「世界の秘境で取れた薬草!」「数千年にわたる治療の経験が効果を証明している!」美辞麗句をならべたサプリメントに心が動く人もいるでしょう。しかし、それだけ長い歴史と大きな実績があるものに、医学的な根拠が全くないというのは、少し不思議な話です。インスリンが発見された1922年以前は、糖尿病を治療することはできなかったのですよ。古代エジプトなどの古代文明時代に書かれた病気の治療法を受けたいとは思いませんね。
現代医学でわかっていないこともまだたくさんありますが、科学的な根拠のない健康食品に高額のお金を費やすのは、賢い方法とは思えません。
精製品は身体に悪く、原材料の方が身体によい?
「精製された成分より、植物の種子や葉、根などをそのまま摂取したほうが効果が大きい」。医療不信から、薬よりも全体として取る薬草やサプリへの心理的なあこがれも出てきているようです。子供の時に母がやってくれた民間療法へのノスタルジーもあるのかも知れません。でも、糖尿病やガンなどのシリアスな病気で「民間療法」が効くチャンスはほとんとないと思います。
糖尿病治療で、サプリメントを服用する考え方
医師は病気診断のトレーニングを積んでいます。自然食品店の店員は、病気診断のトレーニングは行っていません。もし医療的に問題や疑問がある場合は、医師に相談すべきです。サプリメントを摂る前も、主治医に相談するのが一番でしょう。妊婦や授乳中の女性、糖尿病などの慢性病のある人には、サプリの影響は2倍にも3倍にもなることがあることを忘れてはいけません。
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