味覚と健康のつながり
ではおいしいと感じるものを食べていれば、問題はないのでしょうか。豊かな日本の食卓では、男性や子どもには肥満の傾向もあります。例えば、「おいしさ」は、β―エンドルフィン、ドーパミンなど脳内物質の作用により、満足感を得たり、もっと食べたいという気持ちに導かれやすいものです。ですから、その魅惑の力にとめどなく引きずられると、食べ過ぎてしまいがちです。健康的な食事とは、何か一つの食べ物に偏るのではなく、多様な食品から幅広い栄養素や成分を摂取することが大切です。ですから、基本味をバランスよくおいしく感じられることが、健康のためにも重要なのです。
「味覚を育てる」意識
-----どうしたらバランスよく感じられるのでしょうか。味博士 鈴木「味覚を育てていく、という意識が必要だと思います。味覚はずっと変わっていないように見えて、実は食経験で細かく変わっているのです。人は、おいしく味わいたいと思うのは当然ですが、健康によいものを”飽きずに”おいしく感じられる味覚を持った方がよいでしょう。
単調な味(特定の味のみが強い味)だとすぐに飽きてしまうので、どんどん強い味を求めてしまいます。その結果、微妙な味の違いを感じられなくなってきてしまいます近年は、「強い味」がトレンドですが、これでは糖分や塩分の摂りすぎになって、さらに長期間にわたると生活習慣病にもつながる可能性があります。
確かに、1つの食材では味の特徴がないとおいしくないので正五角形にはほど遠い味であっても、複数の食材を合わせて正五角形に近付ければ理想のバランスになります。5基本味が組み合わさった「深みある味わい」を感じる食経験は、味覚を育ててくれ、健康によいものを”飽きずに”おいしく感じられる味覚になっていきます。
漢方にも、食事に「五味・五色」を整えることでお互いに作用し合い、健康のためにはよいという考え方がありますが、科学的にみとても自然と味や栄養のバランスがとれると考えられます。
味の強さを合わせる事(強さが異なると弱い味を感じられない)、そしてバランスを整える事の2つを意識しましょう。
例えば赤ワインは大体3くらいあって、ステーキ肉も甘味も甘味が3を超えています。すなわち、甘味・苦味・旨味の強さが揃い、バランスも取れています。白身魚カルパッチョですと塩味・旨味が2くらいなので赤ワインと比べると味が弱い。
なので、赤ワインにはステーキの方が合う、というるわけです。一方白ワインと魚カルパッチョを合わせますと塩味・酸味・苦味・旨味で味の強さが一致し、バランスもとれるのでよいわけです。