星野道夫との深い縁
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お店の書架には星野道夫の本が並んでいます。
「はい。星野さんはよくあのカウンターに座ってらしたんですよ」
アラスカの自然を撮り続けた偉大な写真家、故・星野道夫は珈琲が好きでした。著書にはキャンプ中に珈琲を淹れて飲む光景がなにげなく綴られています。抽出器具は簡素だったはずなのに、彼が手にする珈琲のなんとおいしそうなこと。
フェアバンクスに家を持った彼が日本に一時帰国するとき、ベースキャンプにしていたのが螢明舎。星野道夫は千葉県市川市の生まれ。ご実家はいまも市川にあるそうです。
星野さんはなぜ、そんなにもお店を愛してくださったのだと思われますか。 そう下田さんに訊ねてみました。
「これは信じてもらえますか…私と彼の前世からの因縁のようなものに思えます。お互いが分身のような出会いであり、おつきあいでした。ですから、彼がお店にいるのは自然なことでした」
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カウンターの風景。
パチパチパチパチ、僕の気持ちをほぐしてくれる。
熱いコーヒーをすすれば、もう何もいらない。
やっぱりおかしいね、人間の気持ちって。
どうしようもなく些細な日常に左右されてゆくけど、
新しい山靴や、春の気配で、こんなにも豊かになれるのだから。
人の心は深く、そして浅い。
きっと、その浅さで、人は生きてゆける。
(『早春』より 星野道夫~『アラスカ 風のような物語』収録)
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習志野市谷津にもお店があります。