住みたい街 首都圏/住みたい街の見つけ方

ハード&ソフトの調和が住みやすい街を生む 住み心地は『地域力』で決まる

住みやすい街は下水道や道路などがきちんと整備されているのはもちろん、住んでいる人が街を大事に思える、コミュニティが育まれる街でなくては。そんな街を表わすキーワードが『地域力』です。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

『地域力』。これは住みやすい街を示す言葉として私が考えたものです。これまで、街づくりと言えば、主に道路や公園、住宅といったハードのみを指してきました。しかし、多くの団地やニュータウンが抱える問題、空き巣の多発や子どもを巻き込む犯罪など、街を巡る社会問題の解決策を考えると、住みやすい街はハードだけでは作れないことに気づかされます。例えば、住む人が自分の街に無関心で、「街に住む」という意識、コミュニケーションがなければ、いくら防犯カメラを設置しても空き巣は減らないのです。

団地、ニュータウンは将来を考えていなかった

高齢化に適応できない公団住宅
古い団地ではエレベーターがない、階段が急など高齢者への配慮を欠いている
高齢の知り合いが都下の団地、ニュータウン(NT)などに住んでいます。この、彼らの住む街はいまやさびれ放題、商店街も虫食い状態に空きが目立つ活気のない場所になっています。道路や公園、住宅など、きちんと計画して作られたはずの街なのに、どうしてこうなってしまったのか……。

原因として考えたことがあります。まずひとつは、将来を予測していなかったことです。例えば多摩ニュータウンの開発が始まったのは1964年。日本が高度経済成長をしていた時代です。だから、日本の高齢化がこんなに急速に進むとは誰も考えていなかったのでしょう。建物、住戸ともにバリアフリーなぞ概念もなく、5階建ての建物でもエレベーターがなかったりします(*)。

(*)もちろん、以下の内容も含めて、近年のニュータウンは別です。

同様に車社会も予測されていなかったのでしょう、駐車場のない団地の多いこと。コンビニも少ないし、働き続ける女性のための育児施設など、間違ってもありません。インターネットの普及は論外です。

団地、NTでは住まいは単なる箱だった

住む街への愛着を育む美しい景観
無味乾燥は街並み、単なる数字が自分の住む棟を示す
もうひとつの大きな原因は住まいは2DKや3LDKといった箱としてしか考えられていなかったことです。抽象的な言い方になりますが、その中での暮らしぶりや、箱を越えた人との関係、街や周辺地域とのつながりはまったく考慮されていなかったという意味です。

この原因はさらに2つに分けられます。ひとつは生活を豊かにしようという配慮がないことです。住まいという箱の中での間取り、設備の使いにくさは仕方ないとして、例えば、敷地内の植栽や色彩計画、建物の外装などを考えてみてください。古い団地には単なる箱が並ぶだけ。そんな街に、住む喜びや誇りを感じるのは難しいのではないでしょうか。街に愛着を持ち、街を良くしようとも思いにくいでしょう。

コミュニケーションを図る場所
これからは街にどれだけのコミュニティ、コミュニケーションがあるかが住みやすさを左右する
ふたつ目はコミュニケーションを育もうとする配慮がないということ。敷地内に集会所は用意されているものの、通りすがりにちょっと腰を下ろしておしゃべりを楽しんだり、子どもの誕生日会に気軽に集まれるような場はありません。

また、郊外立地で、新しく切り開かれた場所の場合、仕方ない面はありますが、周囲と隔絶した存在であることは大きなマイナス要因。人の交流がなければ、街の活気は生まれないのです。

つまり、団地、ニュータウンは道や建物、公園などのハードだけは作ったものの、ソフト面への配慮がなかったために、高齢化は進むまま、商店街は寂れるまま、敷地内は荒れるまま……という状況に陥っているのではないかと思うのです。


ではハードとソフトのバランスのとれた街、『地域力』のある街とはどんなものか、
次ページで見ていきましょう。
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