団地、ニュータウンは将来を考えていなかった
古い団地ではエレベーターがない、階段が急など高齢者への配慮を欠いている |
原因として考えたことがあります。まずひとつは、将来を予測していなかったことです。例えば多摩ニュータウンの開発が始まったのは1964年。日本が高度経済成長をしていた時代です。だから、日本の高齢化がこんなに急速に進むとは誰も考えていなかったのでしょう。建物、住戸ともにバリアフリーなぞ概念もなく、5階建ての建物でもエレベーターがなかったりします(*)。
(*)もちろん、以下の内容も含めて、近年のニュータウンは別です。
同様に車社会も予測されていなかったのでしょう、駐車場のない団地の多いこと。コンビニも少ないし、働き続ける女性のための育児施設など、間違ってもありません。インターネットの普及は論外です。
団地、NTでは住まいは単なる箱だった
無味乾燥は街並み、単なる数字が自分の住む棟を示す |
この原因はさらに2つに分けられます。ひとつは生活を豊かにしようという配慮がないことです。住まいという箱の中での間取り、設備の使いにくさは仕方ないとして、例えば、敷地内の植栽や色彩計画、建物の外装などを考えてみてください。古い団地には単なる箱が並ぶだけ。そんな街に、住む喜びや誇りを感じるのは難しいのではないでしょうか。街に愛着を持ち、街を良くしようとも思いにくいでしょう。
これからは街にどれだけのコミュニティ、コミュニケーションがあるかが住みやすさを左右する |
また、郊外立地で、新しく切り開かれた場所の場合、仕方ない面はありますが、周囲と隔絶した存在であることは大きなマイナス要因。人の交流がなければ、街の活気は生まれないのです。
つまり、団地、ニュータウンは道や建物、公園などのハードだけは作ったものの、ソフト面への配慮がなかったために、高齢化は進むまま、商店街は寂れるまま、敷地内は荒れるまま……という状況に陥っているのではないかと思うのです。
次ページで見ていきましょう。