都市計画法が定める用途地域は全12種類
これによって、建物の用途、規模などに規制
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道路の両側は第二種住居地域だが、一歩入ると第一種低層住居地域となるエリア |
都市には、商業や工業、娯楽、居住など、いろいろな機能があります。それぞれ必要な機能ではありますが、住宅街に工場があるなど、異なる機能が無秩序に混在すると、生活環境の悪化や、生産性を損なう恐れがあります。
そこで、都市計画法では、土地ごとにどのような用途で使うのか、そのためにはどんな建物なら建ててもよいかを定めており、これを用途地域と呼びます。用途地域は住宅から商業、工業などの用途ごとに、12種類に定められており、地域によってはそれに付随して、特別用途地域(中高層階住居専用地区・特別工業地区・文教地区等)、高度地区、防火地域および準防火地域などの地域地区が定められていることも。また、用途地域ごとに、
建ぺい率や
容積率、高さなどの制限も生じてきます。
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都心回帰に伴って、本来住居中心でなかったエリアに住宅ができ、混在している場合が多くなった |
その用途地域が住まいに与える影響としてまず挙げられるのは、そこに何が建てられるかということ。同じ広さの土地でも、用途地域が違えば、建てられる建物のサイズは違ってきます。同じ広さでも低層マンションしか建てられない地域とタワーマンションが建つ地域があるのです。よく、タワーマンションの隣にはタワーマンションが建つといわれますが、これは、用途地域が同じであれば、同じものが建てられる、タワー最適地の隣は同様に最適地であるということなのです。
また、当然、住環境にも差が出ます。周辺が住宅ばかりの地域と、工場も混在する地域では音や臭い、交通量など、あらゆる面で違いが生じるのは当然のことです。
住居系の用途地域は7種類
住居専用地域なら環境は良いが、便利さには疑問も
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第一種低層住居専用地域では店舗はおろか、自動販売機も置かれていないことも |
では、実際の用途地域を見ていきましょう。全12種類の用途地域は大きく住居系、商業系と工業系の3種類に分けられます。そのうち、住宅が建てられないのは工業専用地域だけ。つまり、大半の場所で住宅は建設可能となっているのです。
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小中学校は住居専用の地域でも建てられる。周辺が静かなだけに声が響くことも |
その住居系の用途地域はさらに、低層住居専用地域、中高層住居専用地域、住居地域、準住居地域に分けられ、前者から後者へ制限はだんだん緩やかになります。低層、中高層はもう一段階、第一種、第二種と分けられます。つまり、もっとも、制限が厳しいのが第一種低層住居専用地域で、俗に一種住専と呼ばれる地域。ここでは建物の高さが10mあるいは12mなどとなっているため、マンションなら3階程度までしか建てられません。基本的には2階建て中心の一戸建てが大半で、住宅以外では小中学校、小規模な公共施設などがある住宅街です。
住居系用途地域一覧
用途地域 | 建てられるもの |
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第一種低層住居専用地域 | 低層住宅のための地域。ごく小規模な住居兼用店舗、小中学校、診療所は建築可能。高さ制限は10mあるいは12m |
第二種低層住居専用地域 | 低層住宅のための地域。第一種に加え、コンビニなどの小規模店舗も立地する、高さ制限は10mあるいは12m |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅のための地域。中規模な公共住宅、病院、大学と中規模店舗が建設可能。高さ制限は土地による |
第二種中高層住居専用地域 | 第一種に加え、小規模のスーパーや広めの店舗、事務所なども建設可能。高さ制限は一種同様 |
第一種住居地域 | 住居の環境を保護する地域。一定規模の店舗、事務所、ホテルに加え、ごく小規模の工場も建設可能 |
第二種住居地域 | 第一種に加え、パチンコ店、カラオケボックスなども建設可能 |
準住居地域 | 住居と自動車関連施設などが調和した環境を保護するための地域。小規模の映画館、車庫・倉庫なども建てられる |
※主な要件のみをピックアップ
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道路の幅は用途地域に影響するが、線路は関係ないことも。そのため、線路際でも一種低層住居専用地域はありえる |
さて、一般に住環境として最適と考えられがちな一種住専ですが、商業施設は床面積が50m2以下とごく小規模なものしか建てらず、コンビニも許可されないため、利便性が高いと言いがたいのが難点。また、幅員4m程度の細い道に面している場合も多く、災害時に安全かどうかをチェックする必要もあります。住宅という意味では、同じ広さに他の用途地域と比して小さな建物しか建てられないので、その分、価格が高くなる場合もあります。
第二種低層住居地域は高さ制限は第一種住専同様に10mあるいは12mですが、コンビニが建てられるようになるため、便利さはちょっとアップします。
中高層住居専用地域になると、建物の高さの制限が大きく異なり、地域によって30m、45mなどとなります。そのうち、制限の緩やかな第二種では、小規模なスーパー、公共施設に病院、大学、事務所なども混在してくるようになりますが、住居専用地域内であれば、生活環境を脅かすような建物はほぼ建てられないと思ってください。
では、次ページで、住居専用地域以外を見ていきましょう。