「腸重積(ちょうじゅうせき)」とは?
腸重積は早期発見、早期治療が肝心です。赤ちゃんが激しく泣くのを繰り返し、嘔吐、トマトのような粘血便の症状が出たら、早めの受診を
締め付けられている時間が長くなると、腸自体が腐ってしまうため、できるだけ早く腸にはまり込んだ腸を元に戻す必要があります。腸重積の原因、症状、診断・検査法、治療法について解説します。
腸重積の原因は不明? 80~90%は2歳以下で発症
このように腸管が嵌りこんでいます
一方、小学生以降で似たような症状が起こった場合には、腸の異常として、ポリープと言われる良性のできもの、腸の別の小部屋のようなメッケル憩室、リンパ節が腫れた悪性リンパ腫などが原因として考えられるため、詳しく検査する必要があります。また、病原性大腸菌などの胃腸炎による腸重積も報告されています。
腸重積の主な症状……激しい腹痛、嘔吐、血便
腸重積は腹痛や粘血便、腹部のしこりがキーポイントの症状になります。主な症状は以下の通りです。■約20分間隔の激しい腹痛、機嫌が悪くなる
激しい腹痛が起きます。腸が動くとはまりこんだ腸が締め付けられるため、痛みがひどくなり、20分おきぐらいに腹痛が起きます。年齢的に、腹痛があってもなかなかお腹が痛いと言わないことがあるので、約20分おきに激しく泣く場合は腹痛を疑う必要があります。
■頻回に嘔吐する
はまりこんだ腸のため、食べものが腸を通らなくなり、嘔吐することがあります。頻回に嘔吐する時には注意が必要です。
■粘血便が出る
トマトをつぶしたような便が出ることがあります。血液の方が多く、時に血液がやや黒ずんだ感じのものが出ます。形の無い水様便であることが多いです。
■顔面蒼白になる
腹痛が無い時には顔色も悪く、ぐったりしていることが多いです。腹痛が起きると再び機嫌が悪くなります。この状態を繰り返します。
腸重積の検査方法は? 腹部超音波検査と造影剤で診断
正常の造影写真で、大腸がすべて白くうつっています
白い造影剤が途切れて、先がカニの爪のようになっています
腸重積の治療法……整復方法・手術方法・腸切除の可能性も
腸重積の治療法は、圧を加えることにより腸重積を元の状態に戻す「高圧浣腸法」と手術法に分かれます。高圧浣腸法でも腸が元に戻らない場合は、外科手術となります。■高圧浣腸法
腹痛などの症状があってから72時間以内なら高圧浣腸法を行います。注腸には、造影剤や空気、生理的食塩水など、腸管外に漏れた時に安全なものを使いますが、それぞれ一長一短があり、基本的にはその施設でもっとも行われている方法が望ましいとされています。腸重積整復後に腸重積が再発する率は約10%です。
1.造影剤による整復
X線の透視の元に、高圧浣腸法では、1mくらいの高い位置に設置した造影剤を、高い位置から低い位置へ行こうとする重力の力で、肛門に入れたチューブを通じて腸内に入れていきます。
通常の浣腸と違い、直腸よりも奥の腸内まで、無理なく造影剤を入れることができます。流し込まれた造影剤の力ではまりこんでいた腸が押し出されていきます。小腸にまで造影剤が流れると、元に戻ったことがわかります。施設によっては、設備とその設備の状況、スタッフの数に応じて、造影剤だけでなく、空気や生理食塩水を使ったり、超音波検査を使ったりして整復することがあります。
2.空気を注入して整復
空気整復は、空気を入れて、重なった腸を押し戻す方法です。この場合は、重なった部分が解消された時に音がするので、それを確認します。腸管のガスが多いため、超音波検査での確認が難しいのが難点です。
3.生理食塩水を注入して整復
生食などの液体を入れて、重なった腸を押し戻す方法は、超音波検査の下で確認しながら、整復します。
■外科的手術
開腹後、腸をお腹から出して、Hatchinson法という方法ではまった腸を外から押し出す形で戻します。決して、引っ張って腸を戻す事はありません。腸がすでにかなり傷んでしまった場合は、やむを得ない処置ですが痛んだ腸を切除し、正常な腸同士をくっつける手術を行います。腸を切る手術なので、できれば避けたいものです。そのためには早期発見、早期治療が大切です。
2歳以下の子供の機嫌が悪くなり、20分おきに激しく泣きだし、加えて、トマトのような粘血便や嘔吐の症状がみられる場合、早めに医療機関を受診するようにしましょう。