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梅ヶ丘産婦人科訪問記

このたびは世田谷区の梅ヶ丘産婦人科の辰巳院長に取材に伺いました。実をいうと私が製薬企業に入社し、不妊治療について学んだ時に教科書として使っていたのが、その当時、辰巳先生の著書でした。もちろん不妊治療の事を知らない訳ですから、その本を繰り返し読み、不妊治療の基礎知識を頭に叩き込んだ記憶があります。

執筆者:池上 文尋

クリニックの全景です

梅ヶ丘産婦人科の全景

今回は、世田谷区の梅ヶ丘産婦人科の辰巳院長に取材に伺いました。実を言うと私が製薬企業に入社し、不妊治療について学んでいたとき、教科書として使っていたのが辰巳先生が書かれた本だったのです。

当時はもちろん不妊治療の事を知らないわけですから、その本を繰り返し読み、不妊治療の基礎知識を頭に叩き込んだ記憶があります。辰巳先生は私にとってある意味、不妊治療分野における師匠です。

辰巳先生は京都大学で初めて作られた体外受精チームのメンバーの一員であり、日本の体外受精におけるパイオニアのおひとりです。そんな辰巳先生にインタビューのお時間を頂くことが出来たのはなんとも感慨深いものがありました。

それでは今回のインタビューの内容をご覧ください。

不妊治療専門医になったきっかけを教えて下さい

私は京都出身で大学も京都大学の医学部に進みました。最初はお産に興味があり、産婦人科を選択しましたが、産婦人科医師として治療にあたっているうちに不妊の方を何とかしてあげたいと思うようになりました。

不妊治療はドクターの熱意と工夫で改善できる可能性がある医療なので、とても興味を持ったのです。

実は私が医師になりたての頃、京都大学では生殖医療に力を入れていました。今では大御所と呼ばれる先生方が指導医としておられ、幸いながらこの素晴らしい先生方に一から手ほどきを受けるチャンスに恵まれました。

ご存じだと思いますが、森先生(京都大学名誉教授)、岡村先生、(熊本大学名誉教授)、麻生先生(東京医科歯科大学名誉教授)、野田先生(滋賀医大名誉教授)とそうそうたるメンバーでした。

クリニックの玄関です。駅から徒歩1分かかりません。

クリニックの玄関です。駅から徒歩1分かからない立地も便利です

大学での研修後は長浜市立病院に勤務し、その後、森先生が京都大学の教授に着任されたことで、東京大学医科学研究所に学びに行く機会を頂き、1年で学位論文を書き、昭和61年から大学でのIVF研究と治療に専念しました。

そこからはご存じの通り、不妊治療にまっしぐらとなりました。そして平成3年から梅ヶ丘産婦人科にて不妊治療を続けております。

先生の治療方針について教えて下さい

私は必要最小限の治療で妊娠して頂きたいと思っています。患者さんは一日も早く妊娠したい一方で、できれば自然に近い形で妊娠したいという考えもお持ちだと思います。

今は体外受精花盛りの時代ですが、当院で妊娠される方の65%は一般不妊治療や人工授精による妊娠です。費用的にも身体的にもできるだけ負担の少ない方法で妊娠して頂きたいと考えています。

ただ、一般不妊治療や人工授精に時間をかけ過ぎて、いざ体外受精に移った時には体外受精でも妊娠できなくなっているという事態は避けなければなりません。

一般不妊治療、人工授精、体外受精をどのように使い分けるかが最も大事なところだと思っています。

先生は論文の中で人工授精(AIH)について意外と成績が良いと書かれていますが、詳しく教えて頂けますか?

入口から見た院内の様子です

入口から見た院内の様子です

 

当院のホームページにも載せているのですが、不妊治療においては一般的に、5~6回人工授精(AIH)をしたら、次のステップである体外受精に進むというパターンが多いと思います。

しかし、当院の1万例を越えるデータでは、AIHは14回目までは妊娠率があまり落ちないという結果になっています。もし年齢的に余裕があり、ご本人も希望されるのなら、人工授精を10回程度続けても良いと思っています。

また、体外受精に移行して妊娠しなかった場合、体外受精と体外受精の間の待ち期間に人工授精を行うことも実施しております。

40歳を超えると、妊娠可能な卵子が排卵する確率は10%くらいしかないかもしれません。しかも、良い卵子がどの周期で排卵してくるかわかりません。ですから毎周期、妊娠できる準備を整えておく必要があります。

私は、患者さんの年齢が高い場合には、体外受精を行わない周期にもできるだけ人工授精やタイミング法をおこなっています。それはいつ良い卵が出てきても対処できるようにするための方策です。

患者さんはどの年代が多いですか?

受付横からの院内の様子です。

受付横からの院内の様子

35歳前後の方が多いですね。もちろん40代の方も多いです。平均年齢だと35歳ぐらいではないかと思っております。






治療成績を拝見していると平成10年に急激に患者数が増えていますが、何か理由があるのでしょうか?

実はそれまでこの病院はお産も行っておりました。しかし、それではどっちつかずになってしまうので平成10年にお産を中止し、不妊専門クリニックにしたのです。

先生のクリニックはとても混むと思いますが、それに対して先生は何か対策を行われていますか? 特に気をつけていることはありますか?

一応完全予約制ですが、それでも日によっては随分混んで、申し訳なく思っています。また、下記の事に気をつけております。

1. 初診はじっくり話し合う
2. できるだけ患者さんの希望に沿った治療を行う
3. 治療の方針(スケジュール)を明確に説明する
4. 特に治療の切り替え時にはきちんと話し合う
5. 聞かれた質問にはきちんと答える
6. 私の説明だけでは不十分と思われる場合には、ナースをはじめスタッフが時間をかけて丁寧に説明する


少しプライベートな質問ですが、先生のプロフィールを拝見し、その多趣味さに驚いております。そのバイタリティはどこから生まれるのでしょうか?

辰巳院長先生です。

辰巳院長先生。優しい語り口と理路整然とした治療方針が印象的でした。

私は、学生時代から始めたアイスホッケーを現在まで続けています。基本的に運動が好きなので、仕事後に疲れていても、夜、テニスやアイスホッケー、そして時間のないときにはゴルフの打ちっ放しに行きます。

しかし、それは私にとって良い気分転換になって、また翌日元気に仕事に入れるのです。





最後に、読者の方へのアドバイスをお願いします

第一に、子供が欲しいと思っているなら少しでも早く治療を開始してください。年齢が高くなると、どうしても良い卵子が少なくなり、妊娠の可能性も低くなります。年齢因子は一般に考えられているよりずっと厳しいものがあります。40歳を過ぎると、かなりの運がなければ、妊娠、出産に結びつきません。また、妊娠し始める事を早める事はお産の時にトラブルが少なくなることに結び付きますので、ぜひ早めの妊娠をお勧め致します。

それから治療にするにあたり、通院するクリニックの治療方針をよく調べてから行かれる事をお勧め致します。今、日本の不妊治療クリニックは施設によって全く考え方が違うことがよくあります。

調べずに行って、合わなくて不妊治療が嫌になってしまう方も多いのです。そのあたりに気をつけてクリニック選びをして欲しいと思います。

最後に

今回取材をさせて頂き、私自身とても勉強になりました。27歳の時に先生の本で学び、また43歳の今、再びご本人から学んだというわけです。

体外受精の事を知り尽くしている先生だからこその人工授精活用法には驚きました。もっと人工授精をチャレンジしても良いというのは経済的にもカラダ的にも体外受精が難しい方にとっては福音だと思いました。辰巳先生の優しい語り口、理路整然とした治療方針が今まで多くの妊娠を生み出している事がよくわかりました。

「地に足のついた不妊治療」、取材をしていてそんな言葉が頭に浮かんできました。

最後に長時間の取材に応じて頂いた辰巳院長にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

関連サイト:梅ヶ丘産婦人科
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