企業派遣とは

将来の幹部候補として企業の若手人材がビジネススクールに企業派遣

将来の幹部候補として企業の若手人材がビジネススクールに企業派遣される

企業派遣とは、会社の人事制度の一環として、将来の幹部候補となる若手人材を、国内外のビジネススクールに派遣することをいいます。

日本企業が生涯雇用制度を採用し、労働市場の流動性が低いために発達した日本企業特有の制度です。海外では、一部コンサルティング会社などが非常に限定的に採用しています。

日本企業は、1950年代から60年代にかけて英語を話せる人材を増やすことを目的とし、米国や日本にある語学学校に人材を数ヶ月送っていました。1970年代に入ると米国でのMBA取得ブーム到来。日本企業の経営陣が、MBA取得のためにビジネススクールに社員を送れば英語の勉強と経営の勉強が同時にでき、世界的な人脈も構築できるとの期待を持つようになりました。そこで、語学学校に代わりMBAを取得できる海外ビジネススクールに2年間(ビジネススクールの一般的な勉強期間)若手人材を送るようになったのが企業派遣の始まりです。

1978年に慶應義塾大学ビジネススクールが設立されたのをきっかけに国内ビジネススクールの設置が続き、日本企業は国内ビジネススクールにも人員を派遣するようになっています。

会社側からいえば、MBAに1人の人材を送ることは、短期的には大きな費用負担になります。MBA留学中も留学費用(渡航費、学費、滞在費など)を払うだけでなく、派遣された社員に給与などを支払います。例えば、年間給与が500万円の人を2年間MBA取得できる海外ビジネススクールに送ったとすると、留学費用が約2,000万円程度(スタンフォード大学発表の学費と滞在費平均)。そして、2年間の給与1,000万円を支給するので、会社は2年間で約3,000万円の費用を負担することになります。

国内ビジネスクールの場合は、学費が約300万円と海外に比べて安くなるだけで、2年間の派遣を通じて1,300万円程度の費用負担です。

国内外を問わず企業派遣は優秀な人材が戦列から2年間離れるので、企業派遣を行える企業は人員にも余裕のある大手企業に限定されます。


減少している日本企業の企業派遣生

ここまでの費用をかけて、会社はなぜ若手人材をビジネススクールに派遣するのでしょうか? 派遣した人材がビジネススクールでの経験や知識取得、そして構築した人脈から長期的に生み出す収益が、短期的なMBA派遣費用負担を超えると会社が期待していたためです。

しかし、現実は日本企業からの企業派遣生は1980年代後半をピークに減り続けています。大手日本企業の収益が減少し、短期的に多額の費用がかかるMBA派遣を行える余裕が経済的背景からなくなったことが大きな要因でしょう。

ただ、それだけではありません。企業派遣制度は、派遣した人材が長期的に会社に収益をもたらすことを前提に設計されています。生涯雇用システムの趨勢的な衰退と、能力をもった人材を対象とした転職市場が充実してきたことから、派遣した人材がMBA取得し企業に戻った後会社を辞めてしまい、企業に長期的に収益をもたらさないようになってきたことも企業派遣生の減少につながっているのです。企業は、派遣した人材にMBA取得後数年間は会社にとどまることなどの制約を課していますが、派遣した人材が留学費用の返還を行い転職してしまっているのが実情です。

ガイドの場合、留学後5年間は企業にとどまるとの約束をしていましたが、留学2年後に企業から請求された学費を返還し外資系企業に転職。返還した学費は、転職先の外資系企業が全額払ってくれました。

企業派遣生は、恩義のある企業に対してひどいことをしているのでしょうか? 慶應義塾大学ビジネススクールの調べによれば、企業派遣生が企業に戻ってきた後、ビジネススクールで得た知識を利用できる配属がなされなかったと感じている人が43%に達し、企業側も派遣したMBA学生を活かしきれていない実態があるのです。

ガイドが留学後に会社を辞めた理由は、生涯雇用に守られた職場に活気がなく、年功序列の中やりがいのある仕事も与えられなかったことです。何度か新しいビジネスを立ち上げる稟議書を上げましたが、稟議が最終的に承認されるまで最低でも半年から1年かかる経営スピードの遅さに驚きました。転職先の外資系企業は、いきなり経営職のポジションが与えられ、優秀な上司の下、能力に応じて世界の中で自由にスピード感のある仕事ができる最高の環境でした。


企業派遣生になるためには

企業派遣生に選抜されるためには、面接などの選抜試験を勝ち抜くことが必要

企業派遣生に選抜されるためには、面接を含む選抜試験を勝ち抜くことが必要

海外ビジネススクールへの企業派遣生に選出されるためには、少なくともTOEFL iBTで80点程度の英語力があることは大前提。というのも、企業派遣生に選ばれた場合、通常は翌年の10月から海外ビジネススクールに通うことを企業は念頭においているため、1年程度で海外ビジネススクールに合格する英語力(TOEFL iBTで100点以上)が必要とされるからです。国内ビジネススクールへの企業派遣生の場合は、英語力に関してはそれほどは問われません。

加えて社内の企業派遣選抜試験に合格することが必要になります。この試験は、上司からの推薦状、ビジネススクール進学抱負などのエッセー、人事部との面談から構成されることが多いようです。社内試験に合格するポイントは、現時点で周りから仕事ぶりを評価されていて、かつ将来派遣元企業に多額の収益をもたらす可能性がある人材であるかどうかです。

ビジネススクールに進学したかったガイドは、企業派遣選抜試験のエッセーや面接で他の候補生との差別化を図るため、得意なフランス語力を活かせる欧州ビジネスの先行きと自らの貢献可能性を強調しました。もちろん、「足元での仕事の頑張り」を主張したことは言うまでもありません。


企業派遣で注意したいこと

企業派遣制度は、派遣生にとっては素晴らしい制度です。会社が給与を出してくれた上、派遣生は新しい知識も増え、転職できる可能性も広がるのです。しかしながら、MBA取得を目指す際、企業派遣だけを頼りにするのは危険です。なぜなら、あなたの意思だけではなく、会社の意思によってあなたの可能性が決定されてしまうからです。あなたがビジネススクールに行きたいと決定しているのであれば、企業派遣にのみ頼るのではなく自らの手で人生をコントロールすること、つまりは私費でのビジネススクール進学も考えておくべきでしょう。

ガイドは、ビジネススクールに行くことが世界での自らの可能性を広げると思っていたので、企業派遣生に選ばれなければ会社を辞める覚悟を持つほどMBA取得の決意は固いものでした。