猫は飲食店街のある、
路地のある街がお好き?
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魚市場、飲食店街には猫が多い。餌も隠れ家も多いから当然といえば当然だが…… |
これまでで最も多くの猫を見かけたのは三崎です。港町であちこちに魚が捨ててあるなどして餌があるからです、当然でしょう。同様に飲食店街のある街では猫の姿を多く見かけます。日本のど真ん中の、銀座ですら、よくよく目を凝らしてみると、ビルの谷間に猫たちの姿を見ることができるほどです。
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谷中霊園の日当たりのいい石の上でごろごろしていた黒猫。ちょっと、どすが利いた子だった |
餌のある場所以外で猫を見かけることが多いのは、隠れる場所、つまり空き地や古い家などが多い場所です。例えば猫の多さで有名な谷中。広大な谷中霊園の日当たりの良い場所はさながら猫の集会所となっており、猫の写真を撮るつもりなら絶好のスポットかもしれません。
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亀戸の飲食店街の裏口で餌を待っていた猫。飼い猫らしく、首には鈴 |
谷中に代表される下町は全般に猫の多い場所。これまでに取り上げた亀戸や門前仲町、浅草などといった街ではあちこちで寛ぐ猫の姿を見かけます。猫たちは箱や袋のような小さなモノ、狭い場所に入りたがるものですが、下町の路地も同様に猫には好ましいスペースなのかもしれません。
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住宅街の路地、ブロック塀の上で空を見ていた猫。路地に猫はよく似合う |
住宅街でも駅に近い、一戸建て、アパート、マンションが混在するような街では猫をよく見かけます。駅近くであれば飲食店もあり、食べる場所、隠れる場所などがあるからでしょう。これが駅から遠く、一戸建て中心の住宅街まで行ってしまうと、飼われているらしい猫の散歩は見かけるものの、それ以外の猫は少なくなります。
住宅街では新しく開発された、整然とした街は猫に好かれないようです。特にマンション中心の街では、寝場所や隠れる場所が少ないためでしょうか、あるいは餌を見つけにくいためでしょうか、ほとんど見ることがありません。
どんな人が住んでいるかが
猫の数を左右する
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肉屋の看板猫。いつも店先に鎮座して、客を眺めている。高齢のためか、愛想を振りまくことは無いが、常連客の中にはおっ、元気かと人間相手のように声をかける人もいる |
餌がある、寝場所などがあるといった物理的な条件以外に、大きな影響を与えるのは、どんな人が住んでいるのかという点でしょう。具体的に言えば、猫の面倒を見たり、迷惑がらずにいる人がいるかどうか、ということです。その意味で猫の姿をよく見かける下町や古くから開発されてきた住宅街を考えてみると、最大の特徴は住民の高齢化が進んでいるということです。猫は子どものちょこちょこした動きや甲高い声よりも、お年寄りののんびりと優しい動き、声のほうが好きと言いますから、猫とお年寄りは親和性が高いとも思われます。
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日当たりの良い草むらで昼寝中の猫。彼らはいつも天下泰平な感じ。猫のいる街自体にもそんな雰囲気があるような…… |
さらに、猫の面倒をよく見るということであれば親切な人が多いという考え方ができます。駅に近くて、飲食店、住宅街、自然が入り混じった立地とも合わせて考えると、猫の多い街の住み心地は決して悪くはなさそうな気がします。猫がのんびり歩いていられる街であれば、街全体のリズムもせかせかした忙しさと無縁な気がします。大学のキャンパスではよく猫を見かけますが、大学構内が猫にとって居心地が良いのだとすると、猫の多い街も同種の空気があるのかもしれません。
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まるで本物のような、谷中銀座商店街の猫のオブジェ。近くの東京芸大の学生の作品だそうだ |
しかし、違う見方もあり得ます。例えば、高齢者が多い街は、将来的にはどうなのか、という観点があります。長い目で見えれば、若年人口の多い街のほうが発展する可能性が高いからです。また、本人は親切で餌を上げているつもりでも、それは周辺から見てどうか。谷中のように、商店街に猫のオブジェを飾るほどの場所であれば、猫がうろうろしていることは街にとってマイナスではないかもしれませんが、もし、そうでないとしたら……。
特に古くからの住宅街ではない、郊外の空き地、林などの多い地域では、猫の捨て場になっている場所もあると聞きます。その場合、その街では猫は厄介者になっていることもあります。では、猫の多い街、いない街、どちらが住みやすい街なのでしょう?
次のページではちょっとまじめに猫のいる街の意味を考えてみます。