国税庁、逓増定期保険の税務上の取扱いを見直しへ
事の発端は今年の3月中旬。新聞報道等によると、国税庁は、生命保険協会に対して、課税方法を定めた「通達の見直し」を検討する考え方を伝えたそうです。
なんでも、生命保険会社が販売している逓増定期保険の損金算入基準を見直し、「損金算入割合」を引き下げる意向のようです。それでは、もし「損金算入割合」が引き下げられると、どうなるのでしょうか。
そもそも「逓増定期保険」は、法人税の個別通達・課法2-3により、損金算入額が制限されています。しかし、前述のように、通達に則り、制限の基準に該当しないように契約すれば、保険料を全額損金算入することによって、効果的に節税することができます。
ところが、「通達の見直し」を通じて、解約返戻金の損金算入額が縮小されてしまうと、経費計上額が少なくなるため、法人経営者にとって、節税効果が乏しくなってしまいます。つまり、保険を通じた節税を封じられてしまうのです。
これが国税庁の狙いなのです。国税庁は、通達の具体的な改正時期、内容については未定としていますが、もし、これらの新聞報道のとおり、逓増定期保険における解約返戻金の全額損金算入が認められなくなってしまうと例の「裏ワザ」は使えなくなってしまいます。
なお、国税庁による見直しの動きは、生保協会を通じて各生命保険会社に伝えられており、一部の外資系生命保険会社を除いて、国内の主な保険会社は既に販売の一時停止に踏み切っています。
知り合いの保険代理店に聞いてみたのですが、今の段階では、通達がどのように変更になるのか、全く分からない状況のようです。
他の保険を使った節税方法について
念のため、知り合いの保険代理店に、現段階での対応策について聞いてみたところ、以下の保険の活用について教えてくれました。
これらの保険も、「逓増定期保険」と同様に、税務の取り決めを明文化した「通達」のある保険商品で、含み資産を作って節税を見込める保険です。
1 「がん保険(全額損金)」
2 「養老保険・福利厚生プラン(1/2損金)」
3 「長期平準定期保険(1/2損金)」
もっとも上記2、3については、損金算入割合が低いため、「逓増定期保険」ほどの節税効果は見込めませんが、いずれも、解約時期を短く設定するか、長くするかなど、経営者である社長の考え方で商品を選んだり、使い分けることも可能です。
ただし、これらの保険についても、今後通達の変更等が考えられますので、あくまで参考としてお考え下さい。
以上、ざっと「逓増定期保険」をめぐる情勢をお話してきましたが、保険を活用した節税は、仕組みが複雑なのに加え、通達改正等、変化が早いので、経営者の方には難しいことも多いと思います。
社会情勢を踏まえた新しい保険商品が開発されることもありますので、詳細については、保険の仕組みと通達等を熟知した専門家にご相談になってみてくださいね。