今話題の「子育て住宅」だが…
子育て住宅の間取り図。子育て期間のニーズも大切だが、子どもの成長や巣立った後のこともイメージする必要がある |
幼少期は親の目が届くオープンな空間、中高生の時期にはプライバシーに配慮したクローズな空間というように。子どもが巣立ってしまうと、空きスペースとなって子ども部屋をどうするのか困ってしまいます。
つまり2階部分はできるだけ、間取りを容易に変更しやすいように新築時から設計しておく必要があるということですね。子どもが巣立った後でも、夫婦の寝室を分けたり、趣味の部屋に改装するなど、様々な活用スタイルが考えられます。こういったことは「間取りの可変性」というのですが、もちろん、1階部分にもこうした配慮があるといいですね。
ドアが2つある2階部分の間取り。今は1つの大きな部屋だが、必要に応じて可動間仕切りなどによって2つに仕切れるようになっている。写真はミサワホームの分譲住宅 |
近年は「子育て住宅」が住まいづくりのトレンドの一つになり、ハウスメーカーが様々な商品開発や提案を行っていますが、是非、子育て期間以降のライフスタイルを想像して善し悪しを判断するようにしてください。
最も高度な住まいづくり「2世帯住宅」
もう一つの例、「2世帯住宅」の場合。新築当初は当然ながら親世帯と子世帯が同居しているわけですが、仮に親世帯が亡くなってしまった場合はどうでしょうか。子世帯に子どもがいる場合はまだよいのですが、その子どもたちが巣立ってしまうと大変。2世帯住宅は比較的大きな建物ですから、子世帯の夫婦2人で生活するのには大きすぎます。2世帯住宅の建築には、高度な設計提案が必要となる。親世帯が住まわなくなった際の対応も視野に入れておきたい |
2世帯住宅はあらゆる住宅形式の中で最も高度な提案が必要な建物です。新築時の住まいニーズやライフスタイルだけを考慮した建物にした場合、高い確率で将来、暮らし勝手が悪く苦労することは間違いありません。
単世帯になった場合、建物をどのように活用できるのかにまで踏み込んで検討するとよいでしょう。例えば、将来、リフォームによって2つの世帯のどちらかを賃貸にすることを想定したプランもありえるかもしれませんね。
長期使用を見据えた想像力が必要に
住宅は特にここ20年ほどで、建物の頑丈さの点では大きく進歩してきたと思います。しかしながら、ライフスタイルの変化への配慮は十分とはいえませんでした。ですから未だに、高齢化などによって住まいの使い勝手が悪くなり、手放したり建て替えをせざるをえない状況が発生しているのです。長期優良住宅の普及・促進には、このような状況を改善する狙いもあるのです。長期優良住宅は60~100年の耐久性を持つ建物。それを実現するためには、将来のライフスタイルを見据えた住まいづくり、もっというと長期スパンの想像力が、ハウスメーカーにも施主にも必要だということをご理解ください。
次回はこのシリーズの最終回として長期優良住宅と「中古住宅」について考えてみたいと思います。