麻疹の治療法
非常に強い感染力をもつ麻疹(ましん)には、実は特効薬がありません。発症してしまった場合は対症療法が中心になります
■対症療法を行う
高熱に対しては解熱剤、咳には咳を抑える鎮咳薬、痰を切りやすくする去痰薬・気管支拡張薬、鼻水を抑える抗ヒスタミン薬などを使用。結膜炎には点眼薬を使います。クループ症候群では気管支拡張薬の吸入をします。発展途上国の場合は、ビタミンAの投与で麻疹の死亡率を下げられるという報告もあります。ビタミンAは1歳までで10万単位、1歳以上で20万単位を1日1回2日間です。
■細菌感染を防ぐ
麻疹によって免疫力が低下するために細菌感染になりやすくなります。細菌感染に対しては抗生物質を使います。
■間質性肺炎を防ぐ
風船のような肺が固くなってしまう間質性肺炎の炎症を抑えるためにステロイドが使われます。ステロイドは免疫も抑えるので感染対策を行った上で使用されます。
■DICを防ぐ
血管の中で、血が固まってしまい、血を固める成分がなくなってしまうDICに対して治療を行います。つまり、血液が固まらない治療をしたり、血液の成分を補充します。
上記のように、麻疹によって起こる症状、合併症に対する治療を行います。何よりも、麻疹にかからないよう予防することが大切です。
麻疹の予防・ワクチン
麻疹・風疹2種混合ワクチンで溶解液で溶かすと赤色になります(写真提供:武田薬品工業
MR2種混合ワクチンによって、95%以上の人は麻疹に対する抵抗力である抗体が上げられますが、一部の人は抗体ができず、予防接種をしても麻疹に罹ってしまうことがあります。
ワクチンの効果は1回では不十分なので、2回接種します。生後12ヶ月~24ヶ月で1回、5歳~7歳で1回です。
2008年から5年間に限って、中学1年生と高校3年生に接種する事になっていました(2013年3月31日に終了しております。現在は定期接種ではありません)。
麻疹ワクチンを作るために鶏の細胞を使っていますが、卵は入っていないので卵アレルギーがあっても接種可能。風疹ワクチンはウズラの細胞なので、MR2種混合ワクチンでも接種可能です。
ワクチンの副作用は非常に少ないですが、接種後5~14日頃に発熱や発疹がおきることも。もし、ワクチンをしていない状態で麻疹の人と接触した場合は、72時間以内にワクチンをすることで発症を抑えられる可能性もあります。また、抗体を含んだ血液製剤「ガンマグロブリン」を筋肉注射すると、麻疹を軽くする事ができます。
予防接種で何度も痛いものをするのは辛いものです。すでにアメリカでは、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水疱瘡の4種類を混合したワクチンを定期接種として行っています。日本でもこのような予防接種が今後期待されています。ワクチンについて詳しくは「MRワクチン(麻疹・風疹)の接種・時期・副作用」をご覧ください。
麻疹の出席停止・登校基準
学校保健法では、解熱した後3日を経過するまでは出席停止です。麻疹は現在、「全数報告」と言って、麻疹が発生したらすべて保健所に報告することが義務付けられています。予防接種の接種率が上がると麻疹の発生は減少します。日本でも最近やっと患者数が減ってきています。2015年3月27日に世界保健機構(WHO)は過去3年間に日本での固有である麻疹の株(土着株)が存在しない「排除状態」であると認定されています。そのため今後は、海外から人に感染した状態でウイルスが「輸入」されることによる流行が心配されています。2016年現在、関西空港と千葉で海外から持ち込まれたウイルスによる感染拡大が報告されています。詳しくは「なぜ麻疹が流行し始めたのか」をご参照ください。