進化しつつある肺がんの治療
がん治療の進歩に伴い、肺がんに対する治療戦略は、この10年ほどで急速に進化してきています。ただ、基本となる考え方は変わっていません。 |
1)手術
昔は大きく皮膚を切開して手術を行う「開胸手術」が行われていました。しかし、最近では、胸腔鏡と呼ばれるカメラを用いた「胸腔鏡(補助)下手術」が適用される症例も多くなってきました。創部が小さく術後の疼痛が少なく、美容的にもメリットがある一方で、がんの手術で重要な根治性を損なわないことが明らかになってきたので、今後は標準的な治療法になっていくと思われます。
2)抗がん剤
抗がん剤については、10年ぐらい前から新規抗がん剤と呼ばれるあたらしい薬剤が次々と開発されてきています。現在までにそれらの組み合わせを吟味しつつ、よりよい抗がん剤治療のメニューが研究されています。あとは、分子標的薬と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤が、従来の抗がん剤の効果が見られない方に用いられるようになっています。
また、抗がん剤の副作用についても、大学病院での新しい取り組みも散見されるようになってきました。抗がん剤治療は、大きく変わりつつあります。
3)放射線治療
放射線治療については、従来は、脳や骨への転移に対して、これ以上大きくならないように、もしくは痛みを軽減するように、という目的で、いわば姑息的に行われることが大半でした。
しかし、近年の放射線治療機器の進歩によって、初期の肺がんであれば、画像で確認しながら放射線を照射し焼き切ってしまうという、根治的な治療法が行われるようになってきました。これは、従来の考え方とは大きく異なるものであり、今後の発展が期待されます。
このほかに、近年では免疫療法についても徐々に研究は進んでいますが、まだ保険診療で受けられるものは登場していません。
肺がんを予防する確実な方法
初期症状がわかりづらく、他臓器への転移を来しやすい肺がん。早期発見には色々な方法がありますが、予防については唯一といって良い確実な方法があります。 |
それは、喫煙しないということです。
「なぁんだ。」という声も聞こえてきそうですが、日本における近年の肺がんの急速な増加は、昭和30-40年代に、成人男性の喫煙率が80%近くあったことと非常に密接な関係があると考えられています。また、米国では禁煙政策の浸透の結果、肺がんの発生率は減少に転じたという報告もあります。禁煙は、もちろん、再発予防についても重要です。
肺がん予防は、禁煙に尽きる!
このことを是非、胸に刻んでいただきたいと思います。
肺がんの治療と予防については、こちらもご覧下さい。
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