自己血糖測定から得るものはたくさんあります
血糖だけでなく、血清脂質や血圧も冬に高く夏に低い
これは富山大学の山崎勝也医師らが2007年に発表したもので、糖尿病データマネジメント研究会に登録された糖尿病患者33,241人(男性20,302人、女性12,939人)のデータを、3年間にわたって振り返って分析したものです。年度によって多少の差がありますが、3月と9月のHbA1cには約0.2ポイント・パーセントの高低がありました。つまり、3月には全員の平均A1Cが7.2%とすると、9月は7%になるのです。
この傾向は地域や降雪量の違いとは関係なく、全国で同じように認められました。
米国の研究は28万5,705人の糖尿病のある退役軍人を2年間にわたって、毎月のHbA1cを追跡調査したもので、合計85万6,181回のHbA1cテストを行ったという膨大なデータに基づくものです。広大な国土の米国ですから、アラスカから常夏のフロリダまで、全国の退役軍人病院の各々の分析が行われました。論文は2004年に発表されました。
これは前向き研究ですから、年齢や性別、人種、インスリン使用の有無、気候など、こと細やかに分析されています。例えば、やはり高齢の糖尿病患者は総じてHbA1cは低いことが分かりましたし、インスリンを使う進行した患者は、季節によってHbA1cのブレが大きいことも明らかになりました。結論として、HbA1cは冬に高く夏に低い事が証明されました。ピークはこれも3月で谷が9月です。その差はHbA1cで0.22ポイント・パーセントでした。富山大学の結果とまったく同じですね。
さあ、なぜ冬に高く夏に低くなるのでしょう?
だれでもが思いつくのは、年末年始のホリデーシーズンのごちそうと、冬の運動不足が3月のHbA1cにピークをもたらすというもの。しかし、医療サイドが患者に「だから、この時期は特に節制を心がけろ」と教訓めいた話にして結論づけてしまうことには異論があります。なぜなら、HbA1cの数値は1ヵ月前のウエイトが約50%、2ヵ月前の分が40%、3~4ヵ月前のものが10%位と考えられているからです。赤血球の寿命が約120日で毎秒単位で大量の赤血球が新しく入れ替っているからですね。だから、12月の年末やお正月は考えるほど3月には残っていないのです。
米国の研究では冬の最低気温が4℃以上ある温暖地では、夏冬のHbA1cの差は0.08ポイント・パーセントとほんの僅かでしたが、寒い土地ほど夏冬の差が大きくなるのではなく、不思議なことに真冬の最低気温が0℃~4.4℃以上の中間地帯のHbA1cが0.24ポイント・パーセントと一番差が大きかったのです。
温暖地の夏冬の差がごく微かというのは、ホリデーシーズンの食事の影響がないことを示すようで興味深いことです。
私はインスリンのマルチショットをしている2型糖尿病ですが、なんとなく感じているのは秋から冬にかけて早朝空腹時血糖が上がり気味なのです。心配ない範囲ですから基礎インスリンを増やすことはしませんが、何か倹約遺伝子が関与しているインスリン抵抗性の年周期があるような気がしています。動物たちは季節になると、出産や寒さに備えて脂肪を貯え始めますが、あれも体内時計つまり時間遺伝子のなせる業ですよ。
皆様も血糖自己測定をしながら、HbA1cの季節変動を実感してみませんか?
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