アメリカ糖尿病協会による『ストップ!糖尿病』。キャンペーンで正しい知識の普及を目指します。
この結果を受けてアメリカ糖尿病協会(ADA)は「ストップ! 糖尿病」というキャンペーンを始め、一般の人や糖尿病者の家族、本人への正しい知識を広める運動をスタートしました。私たちも糖尿病の常識に挑戦してみましょう。
糖尿病にはデマや噂話がいっぱい!
今回の調査はADAの依頼を受けてハリス・インタラクティブ社(Harris Interactive)が全米の一般の2,081人に、糖尿病の知識を質問したものです。平均年齢は46歳で285人が糖尿病と診断されていました。これから分かったことは、アメリカでは糖尿病の正しい知識が普及してなく、あいまいな、時代遅れの、根拠のないデマが多くあったということ。これが科学的な根拠に基づくエビデンスを認めるのを難しくし、病気への恐れがさらに輪をかけて不正確な噂話を広めているのです。いくつかの質問を、一緒にチェックしてみましょう。
「糖尿病の人は一般に推奨されているヘルシー食よりも、
食事を制限しなければならない?」
これは日本で指導されている通りなので、皆様は「○」をつけるでしょうね。アメリカの糖尿病者の88%も「○」をつけました。しかし、正解は「×」なのです。そもそも「糖尿病食」なるものはもう存在しないのです。糖尿病者の食事は一般のヘルシー食と同じ。つまり、飽和脂肪酸やトランス型不飽和脂肪酸の少ないローファット食を心がけ、塩分も砂糖もほどほどに、未精白の穀類のパンやパスタ、米飯を選び、野菜やフルーツを十分に摂る食事でいいのです。
減量は治療の目的でなく、血糖安定のための手段なのですから。私はかねてから砂糖の厳格な制限やカロリー重視の食事指導に異をとなえてきました。糖尿病にはもちろんポーションコントロールは大切ですが、同時に食事の質も重要なのです。糖尿病だから空腹に耐えろ!というのはナンセンスですね。そんなことを強いるからドカ食いに走るのです。
「糖尿病はありふれた病気だからたいしたことはない?」
こちらの答えはもちろん「×」です。アメリカでは糖尿病による死亡者は乳ガンとエイズによる死亡者数よりも多いのです。ところが政府による研究費がとても少ないことがADAの不満の種です。アメリカでは糖尿病者の3人に2人が心臓病と脳卒中で亡くなっています。調査結果では糖尿病は生命に関わる病気であると認識している人は42%しかいませんでした。
「糖尿病はスイーツ(砂糖)の食べすぎで起こる?」
これがデマであることを知っていたのは、意外にも3人に1人(32%)しかいませんでした。1型糖尿病は遺伝因子とまだ解明されてない要因から発病します。2型糖尿病は同じように遺伝因子と肥満などのライフスタイル、加齢によって発病すると考えられています。「過体重、あるいは肥満になると誰でも糖尿病になる?」
今回の調査では5人のうち3人(59%)はこれがデマだとは知りませんでした。同じように半数以上の人(53%)が2型糖尿病は加齢と共にリスクが高まることを認識していませんでした。肥満は確かにリスクを高めますが、2型糖尿病はそれだけで発病するのではありません。日本でも2型糖尿病者は普通の体型の人が多いのですよ。そしてほとんどが高齢者です。
質問はもっとたくさんありますが、これだけでも一般の人の糖尿病に対する知識が不足しているのが分かりますね。日本でも同じでしょう。一方、2型糖尿病者は生活改善で予防したり、発症を遅らせることが可能な病気です。それには正しい知識と努力が必要ですね。
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