ステーキはトランプ1組の大きさで十分です。 |
糖尿病になったら甘い物は駄目だとか、粗食にすればいい……なんて良く言われますね。これははっきり言ってデマです。糖尿病者の食事は特別なものは必要ありません。家族の食事と一緒のもので差し支えないのです。普通の食事をして、もしインスリンが不足してしまうならば経口薬やインスリン治療で補完するしかありません。そういう病気なのですから。
日本糖尿病学界が出している食事指導のポイントは、驚くほど当たり前のことです。
1. 腹八分目とする
2. 食品の種類はできるだけ多くする
3. 脂肪は控えめに
4. 食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻、きのこなど)をとる
5. 朝食、昼食、夕食を規則正しく
6. ゆっくりよくかんで食べる
こんなこと誰だって知っています。これらは糖尿病に限りませんね。ごく普通のヘルシーな食生活ですから。
さあ、特別な糖尿病食など無いことが理解できたら次のステップに進みましょう。大事なポイントは2つです。
1. 食事療法のガイドラインはあります。
2. でも特別な「糖尿病食」というものはありません。
まず誤解されている「糖尿病食」について説明します。
一般に糖尿病食とか糖尿病レサピーといわれているものは、カロリー計算や栄養分析がされたものです。糖尿病と初めて診断されて、何を食べていいのか分からない人には、間違いなくこれが目安になりますね。でも、すぐにこんな硬直した食事療法は続けられないことが実感できると思います。
そこでガイドラインに従った普通の食事が勧められるのです。つまり、適正なエネルギー摂取量の指示であり、バランスのとれた食品構成です。
アメリカ糖尿病協会の基本はシンプルです。
- 肥満があれば減量のための低カロリー食を。
- 患者の糖尿病のタイプおよび血糖コントロールの状態によって炭水化物の摂取量を個別に設定する。
- 低脂肪食、特に飽和脂肪酸を減らす。
日本では1型糖尿病と2型糖尿病の食事の目標は分かれていませんが、アメリカではそれぞれの優先順位が異なる食事療法があります。
1型糖尿病では食事の炭水化物摂取量がインスリンや運動量に応じて血糖コントロールにとても大きく影響するので、その摂取量をグラム単位で管理すること。また、成長期の1型の子どもは正常な発育が大切で、十分な栄養素とカロリーを摂取すること。血糖コントロールのために子どもから食べ物を取り上げたり、食べることを強要しないような指示があります。
2型糖尿病では一般に肥満と運動不足がみられるのでヘルシー体重への減量と、3回の食事で取る炭水化物を偏りのないようにするのがポイントです。血糖の源となる炭水化物を摂り過ぎるとコントロールが難しくなるので、その場合は炭水化物のカロリーの一部を一価不飽和脂肪酸を多く含むオリーブオイルやナッツ類で代替することも選択肢になっています。
実際に日本の食事療法で指導されている栄養素の配分は、炭水化物61%、タンパク質18%、脂肪21%程度です。やや脂肪が少なめですが、ごく一般的な食事です。患者の食習慣によってはある程度の変更は可能ですから、遠慮なく栄養士に相談するといいでしょう。