増殖性網膜症による出血 |
糖尿病の三大合併症のひとつである「糖尿病網膜症」は、成人中途失明の原因のトップです。年間3,000人以上が、この病気によって視覚障害者になっています。しかし、この失明の98%以上は防げるのです。そのためには正しい検眼を定期的に生涯にわたって受け、血糖コントロールや血圧をなるべく正常値に近づける努力が求められます。
糖尿病の目のトラブルは一般に痛みを伴いません。その分、検眼がないがしろにされてしまいます。眼底に起こる糖尿病網膜症の他に白内障、緑内障、物が二重に見える、まぶたが垂れ下がるなどの合併症が糖尿病に関与しています。
糖尿病網膜症とは?
目に入った光は水晶体(レンズ)で一点に集められて網膜上に像を結びます。このカメラのフィルムに当たる網膜は無数の細小血管で栄養補給されています。高血糖が続くとこの細小血管が損傷されて血液が漏れたり詰まったりするようになります。つまり、出血したり網膜がむくんだりするようになります。この段階が単純網膜症です。この状態が続くと、からだは血液が届かないところに栄養素や酸素を届けようとして新しい血管を伸ばし始めます。これが網膜や硝子体の内に生じて硝子体出血や網膜剥離を起して視力障害に陥ります。新生血管は構造が弱いので容易に出血してしまいます。
こうなると危険は増殖網膜症になります。このとき、早すぎても遅すぎても駄目なのですが、最適のタイミングでレーザーによる光凝固療法を行えば網膜症の進行を止めたり遅らせることが可能になります。そのためには専門医の指示通りに定期的に診察を受ける必要があります。
糖尿病は目や視力に影響します
高血糖や低血糖になると光の屈折率が変化して目がかすみます。近視が強くなって眼鏡なしで新聞が読めるようになったり、遠くの物がぼやけたりします。また、ドライアイになって角膜が傷ついたり、涙目になったりします。炎症を起こしやすいのでコンタクトレンズは注意が必要です。
白内障や緑内障のリスクが2倍になります
目の前にカーテンが掛ったり、黒いものが飛ぶ(飛蚊症)ように感じたりしたら早急に眼科医の診察を受けましょう。出血の恐れがあります。視野の一部が欠けたり、回復したりしたら網膜の細小血管が詰まったり、むくんだりしている証拠です。
モノが二重に見えたり、まぶたが垂れ下がったりすることがあります。一般には3ヵ月以内に自然に治ることが多い単純神経障害ですが放置してはいけません。命にかかわる重大なサインである可能性があります。
運動療法は通常は問題ありませんが、硝子体出血や新生血管などがある増殖性網膜症のときは医師の指示に従うこと。失明の恐れがあります。
定期的な検眼は眼科医から指示されます。2型の人は糖尿病の診断時に必ず行いますし、以降は少なくとも年一回は受けます。
1型は発症から3~5年後に検眼、以降は毎年。妊娠を計画している糖尿病の女性は事前に検眼をする。計画外に妊娠した場合もなるべく早く受診すること。出産後のフォローもありますから専門医の指示を守りましょう。