河合勝幸 著undefinedundefined監修/朝倉俊成 講談社 1,400円(税別)undefinedISBN 4-06-213191-9

河合勝幸 著  監修/朝倉俊成
講談社 1,400円(税別) ISBN 4-06-213191-9

インスリンを使う糖尿病者の海外旅行はとても容易になりました。以前は長いフライト時間と短い作用時間の中間型インスリンの組み合わせのため、やっかいな時差調整が必要でしたが、今ではフライト時間を十分にカバーできるランタスなどの持続型インスリンがあります。時差によるインスリンの増量・減量も必要なくなりました。

それでも旅行中のインスリンの紛失や劣化、慣れない食事とのマッチング、体調不良、荷物や財布の盗難など、旅の途中ならではのトラブルはあるもの。インスリンを使う旅行者は一つのトラブルが別のトラブルを招きますから危機管理の心構えが必要です。


糖尿病者が気をつけたい移動中の対策

インスリンはフライト中の凍結と自動車旅行のトランク内の高温が大きな問題です。インスリンはペプチドホルモンなので、凍結や高温によって変質や劣化のおそれがあります。インスリンが効かなくなったり、変色や濁りがあった場合は、現地調達(後述)に切り換えましょう。

飛行機の貨物室はフライト中に気温が零下に下がるので油断してはいけません。私はキャンプ用の保温ケースにインスリンを入れて、周りを衣類でしっかりとくるんでトランクに入れます。もちろん、手荷物として機内持ち込みの場合は温度の問題はありません。液体は100ml以下の制限に引っ掛かる可能性がありますが、インスリンペンなら33本なのでまず問題はありませんね。

私は万一の場合に備えて「糖尿病患者であること」、「インスリン治療が必要であること」の医師の証明書(英語)をいつでも提出できる準備をしていますが、手荷物検査の時にいちいち申告することはしていません。今までにこれでトラブルが起きたこともありません。


旅行先でのインスリンの紛失、盗難対策

事故や置き引きに備えて、必要なインスリン量の2倍を手荷物やトランクに分散して運びましょう。日本人旅行者はお金持ちで体も小さく、言葉も不自由。日ごろから危険にさらされていない極上のカモと見られがちなので、あなたは常に狙われています。荷物から手を離さない、目を離さないことです。


インスリンの現地調達方法

旅行先の国や地方、薬局によってインスリンの種類が限定されます。北アメリカや西ヨーロッパは昔も今もインスリンの先進国ですから安心できますが、他の国ではまだインスリンペンが普及していないところもありますから、渡航先によってはR(レギュラー)とNPHをバイヤルから注射器に入れて注射する昔の方法を習得しておく必要があるかも知れません。

さて、すべての薬にはメーカーのつけた商品名と、その主成分を示す一般名があります。商品名は同じメーカーでも国によって変わることがありますし、医学論文では普遍的な一般名を使うのが普通なので、担当医によっては英語の医療記録紹介文にインスリンの一般名を書くことがあるかも知れません。そのときは、一般名と商品名を併記するように依頼してください。恐らく現地の薬局ではインスリンは商品名で管理されているので、一般名で処方をお願いしても「ありません!」と言われる可能性があります。

私の経験では普通の薬局の薬剤師はインスリンの一般名はまずご存知ないようです。例えば私はスペインのバルセロナに自宅があるので、ここにいることが多いのですが、「ノボラピッド」の一般名aspart(アスパルト)で注文しても通用したことがありません。スペイン人にはアスパルトという言葉がエスパルト(espart)に聞こえるようです。"パ"にアクセントがありますから同じになってしまいます。このエスパルトというのは南スペインなどで採れる丈夫な草の繊維のことで、ロープやかごを作ったり、その製品として女性用の軽いサンダルを指しますので、ある女性薬剤師は「サンダルをください」と聞こえると笑っていました。

インスリンペンは国によって商品名が違っても、ペンの形や色は同じ(…と思います)なので、使用中のペンを提示すれば話が早くなります。なお、インスリンペンは5本入りのケース単位で販売されるものだと思いますが、国によっては違うこともあるでしょう。そうそう、ノボラピッドはヨーロッパでは同じくNovoRapidですよ。よかったですね! 価格は1本1,100円位です。
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