クリニックを開業するきっかけを教えて下さい。
入口右側の受付。明るい雰囲気が感じられます
大学では基礎研究を行うと共に臨床も行う訳ですが、大学病院では患者さんの立場に立って考えると不妊治療に向いている場所とは言えません。利便性が悪いし、融通が利かないからです。
私は産婦人科医としてお産を行いながら、不妊治療を行っておりましたが、授かった赤ちゃんを抱いてもらって始めて一つの仕事が出来たと思っていました。大学の不妊治療には限界が多いと感じておりました。しかし、大学の治療を変える事は出来ません。だから、自分で開業するという結論に至りました。
クリニックの治療に対する考え方を教えて下さい。
日本の不妊治療の技術についてはある一定のレベルを超えたクリニックにおいて、そんなに差があるものではないと思っております。洗面台。院内はすべて白で統一されており、清潔感があふれていました
不妊治療はご存じのとおり、「出口のないトンネル」と言われるものです。しかし、妊娠という目的に向かって強い気持ちを持って進んで頂けるようにサポートしていくことが大事だと思っております。
そして、道なき道を出来るだけ近道で進むために治療ステップを共に話し合いながら決めていくスタイルを取っております。
そのために必要なものは2つ。1つは患者さんへの情報提供が大切である事、もう1つはスタッフ同士の情報共有が大切と考えております。
クリニックの治療の特長を教えて下さい。
培養室の様子です。
そして、もちろん必要な方には体外受精や顕微授精などの高度生殖医療も施せるように最新の技術を有しています。
そして、人は1人として同じ人はいないということで患者さん毎に治療を変えています。その方に合った治療をすることが大事ですから。そのために話し合い、信頼関係を気づく事が大切だと思っております。
そして、不妊治療において必要な我慢比べの時間に妊娠能力を把握して、ゴールに向かうお手伝いをさせて頂きます。
先生はオーストラリアで生殖医療について学ばれていたそうですが、その時の事を話して頂けますか?
オーストラリアは大きな田舎という感じですね。本当に人間らしい生活だったと思います。みんなのんびり生活しています。そして家族を大事にしています。国が安定しているので人々の気持ちが優しく、欲があまりありません。私も学びに行ったのですがあまりにものんびりしすぎて論文は少ししか書けませんでした(笑)。
これではダメ人間になるなと思って、日本に戻ってきました。老後には最高の場所だと思います。
クリニックに来ている患者さんの傾向を教えて下さい。
そうですね、ほとんどが35歳以上です。平均37~38歳だと思います。40歳以上の方も約半分おられますね。よってクリニックに来られた時には残された時間が少ない方も多い状況です。先日も42歳、結婚1年目と言う方が来られましたが、そういうケースもちらほらみられます。
だからこういう時間が限られた方の場合は集中力を持って治療に当たる必要性があります。出来るだけの可能性を追求するということですね。
不妊治療と夫婦の問題についてどのようにお考えですか?
卒業生から送られてきた赤ちゃん写真の一部です。喜びの様子が伺い知れます
女性は子供が欲しいというのを本能で感じます。これが母性ですね。男性は頭で考えて、子供が欲しいと思います。そして現実のお子さんを見て初めて父性が芽生えるとも言われています。
そこに意識の大きな差があります。そういう部分をきちんとご夫婦に理解して頂くようにしております。
それから少し話がずれるかもしれませんが、不妊治療をしている方に赤ちゃんが出来た時にも虐待があるといいます。
赤ちゃんに対しての認知は不妊患者さんの中に3つの要素があります。
1) 自分がどう育ったか?
2) 自分の経験は?
3) 現実の赤ちゃんは?
この3つの要素がバランスよくないといけないのですが、不妊治療患者さんでもアンバランスになることがあります。
そして不妊治療をして赤ちゃんが出来た場合、自分がこれだけ頑張って不妊治療をしたのにこんな赤ちゃんが生まれてくるなんて・・・というパーフェクトベビーシンドロームになってしまうことがあります。
私は不妊治療を行いながら、「実は妊娠はスタートである。本当に大変なのは出産・育児である」ということを啓蒙していくことが自分の使命であると思っております。
夫婦のお話が出たのでもう一つ質問です。最近、排卵期にEDになるという旦那さんが多いようですが、先生のところではいかがですか?
院長の三室先生です。気さくな優しい先生です。
なぜ結婚しようと思ったのか? 結婚の意味は?
なぜ赤ちゃんが欲しいのか?
こういう事をきちんと男性に理解をさせる事が大事だからです。ここがストンと腑に落ちれば旦那さんの協力を得られ、妊娠力を増すことが分かっています。
ここで1つ注意なのが、旦那さんに協力を得られなくて、クリニックに相談するのではなくて心療内科や心理カウンセラーに相談される方がおられます。それは基本的に不妊治療の意味とずれてくるので気をつけないといけないと思います。
最近、様々なクリニックを取材していて景気の話が良く出てくるのですが、先生としてはどのようにお感じですか?
そうですね、景気の悪さは感じますね。不妊治療をしているのに仕事を辞められない方が多い。共働きで家族作りをしているご夫婦が多いので本当に健気に思います。だから私は仕事をしている女性の妊娠を出来るだけサポート・応援したいと思っております。
最後にこれを読まれている皆様にメッセージをお願い致します。
いずれ子供が欲しいと思っている方、自分の妊娠について不安に思っている方は自分の頭に不安がよぎったら話だけでもいいので来て下さい。それだけでもウエルカムです。不安を消して頂くだけでも妊娠力を上げる事に結び付きます。人間は妊娠しづらい動物なのです。その上、最近、日本人は新婚でも疲れている。そういう妊娠力が弱っている今の状況を少しでも改善出来れば我々の存在価値があるというものです。
お陰さまで今年に入って一層、妊娠率が上昇しています。これはスタッフの結束が強いお陰だと思います。患者さんの喜びの瞬間を共有出来ることが我々の一番の喜びであり、その思いは全員が一致しています。
まとめ
三室院長はとてもソフトな語り口ですが、物事の本質をずばりと突く内容を色々と話して頂き、私自身もとても勉強になりました。お話をしながら、患者さんの事をいつも考えられているのだなと感じました。夫婦関係や児童虐待と言った家族関係の深い話も出てきましたが、この部分についてはまた改めてお話を伺いたいなと思いました。
三室院長、スタッフの皆さま、長時間にわたり取材をさせて頂きありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
みむろウイメンズクリニック
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