婦人病・女性の病気/その他の女性に多い病気

切迫流産の原因・症状・治療法

妊娠初期から症状が出ることもある「切迫流産。原因と、出血や下腹部痛などの主な症状、治療法について解説します。

清水 なほみ

執筆者:清水 なほみ

産婦人科医 / 女性の病気ガイド

切迫流産の症状

切迫流産の治療の基本は安静です

切迫流産の治療の基本は安静です

流産は、妊娠21週6日までの時期に胎児がきちんと育たず成長が止まってしまったり、子宮の外に出てきてしまうこと。「切迫流産」は、流産にまでは至っていないけれど流産しかかっている、または流産のリスクがある状態のことを言います。

主な自覚症状は、性器出血と下腹部の痛み。妊娠初期は出血しやすいので、おりものに少量の出血が混ざることはわりとよくありますが、月経のような出血や何日も続く出血は注意が必要。

切迫流産になったからといって、必ずしも流産に進んでしまうわけではありませんが、症状がある間は妊娠の状態が不安定であるということになります。特に安定期に入る妊娠16週までは、ちょっとした出血や鈍い下腹部痛がおきやすいので、少しでも症状があれば受診した方が安心です。

切迫流産の原因

妊娠初期の「流産」の原因は、ほとんどが偶発的に起きる胎児の染色体異常です。受精卵に致命的な染色体の異常が偶然起きることが原因で、この場合はどんな治療をしても流産を防ぐことはできません。

一方、「切迫流産」の原因は様々。冷えや過労などの母体そのものへの負担や、着床の時に胎盤と子宮の間に血液がたまってしまう「胎盤後血腫」、子宮の出口の炎症、頸管無力症、子宮筋腫、子宮頸部円錐切除後の影響など。特にこれといった原因がなくても、妊娠初期には出血がおきる事もあります。


切迫流産の治療法

切迫流産が疑われた場合、まずは内診で出血の具合や子宮の出口が開いていないかを確認し、炎症が疑わしい場合はおりものの検査をします。超音波検査では、胎児の発育具合や心拍の有無、胎盤の状態などを調べます。超音波検査で胎児の心拍が確認できればひとまず安心できますが、出血が続いている場合や下腹部の張りが強い場合は入院が必要になることもあります。

妊娠10週未満の出血に対しては、安静にする以外にこれといった治療法がないため、基本的には自宅で横になっておくことしかできません。止血剤や軽い張り止めの薬を内服することもあります。胎盤後血腫が原因の場合は、胎盤の後ろにたまっている血液がある程度減るまで出血が続くことがあるので、入院して血腫の状態を見ていくこともあります。ただし、この場合も治療は安静のみになりますので、とにかく横になっておくことしかできません。

妊娠10週を超えても、少量の出血や軽いおなかの張りのみであれば、安静を指示されるだけで特に薬なども使わないことがほとんど。安静の程度は症状にもよりますが、仕事は休んで家事も最低限にし、入浴や食事など自分の身の回りのことをするとき以外は横になっておくのが基本です。特に働いている方は安静にすることが難しい場合もあるかと思いますが、出血などの症状が完全になくなるまでは、仕事を休むか半日程度の軽い業務のみにしてもらうことをお勧めします。出血量が多かったり、下腹部の張りが頻繁な場合は、入院してしっかり安静が保てるようにします。

子宮の出口が開いてしまう「頸管無力症」が原因の場合は、出口が開かないように紐で縛る「頸管縫縮術」という手術を行うことがあります。また、クラミジアなどの感染で子宮の出口に炎症が起きている場合は、抗生物質で感染を抑える治療を行います。明らかな感染はないけれど子宮の出口に炎症が続いてしまう場合は、炎症や細菌を抑える腟剤を毎日腟の中に入れて炎症を抑える治療を行っていきます。
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