内科的な病気の診断と治療
さまざまな検査項目を手がかりにして腎臓の状態を判断
■基本は尿検査と血液検査
慢性腎炎など、腎臓の内科的な炎症性疾患の診断は尿検査、血液検査が基本になります。
尿検査によって、タンパク尿、血尿、白血球尿、尿糖などの所見が確認できます。また、血液検査では、血中尿素窒素やクレアチニン、尿酸をはじめとするさまざまな検査項目を手がかりに腎臓の状態を判断します。
このほか、確定診断のために腎生検を行うこともあります。この検査は腎臓の組織を採取するもので(通常は、超音波観察下で背中から針を穿刺して少量の腎臓組織を採取)、その変化を見ることで腎炎の種類や程度を知るのに役立ちます。
■生活習慣の注意が重要
慢性腎炎に対しては、ステロイドなどの薬物治療を行うこともありますが、決め手となる治療がないのが現状です。このため、低タンパク食、塩分制限などの食事療法や肥満・高血圧などの生活習慣病の予防が腎機能の悪化を防ぐために重要となります。
感染症の診断と治療
■38℃以上の高熱が腎盂腎炎の特徴
腎盂腎炎は腎臓の細菌感染です。通常は、細菌が膀胱から逆行性に尿管を通って腎臓(腎盂)に到達して、感染を起こします。38℃以上の発熱と共に背中の痛みがあり、全身倦怠、食欲低下なども顕著で全身状態も悪くなります。
腎盂腎炎では早期の適切な対処が重要で、治療が遅れると全身の感染に移行して敗血症という重篤な状態になることがあります。このような症状がみられる場合には、尿検査と血液検査を行います。尿中には多くの白血球が認められ、細菌が見られることもあります。血液検査では、血中の白血球増加がみられます。
腎盂腎炎は腎盂の細菌感染として発症しますが、炎症は腎実質にも波及します。ひどくなると、第2章で述べたような膿腎症や、腎膿瘍といった厄介な状態に至ることもあります。治療は抗生物質の投与が基本です。十分な安静に努める一方、細菌に効力のある抗生物質を適切に早くから使うことが必要です。
■女性に多い腎盂腎炎
腎盂腎炎は女性に多いのが特徴です。前述のように、この病気は通常、逆行性感染といって尿道から膀胱、尿管、腎臓という経路で感染を起こします。女性は尿道が短く、細菌が膀胱に入りやすいので、罹患率が高くなります。膀胱炎が女性の病気と考えられているのもそのためです。
したがって、女性は基礎疾患がなくても腎盂腎炎を起こしますが、男性では尿路結石など基礎疾患がなければ、腎盂腎炎になることはまれです。
腫瘍の診断と治療
■健康診断で見つかるケースが多い
腎臓の腫瘍の診断には排泄性尿路造影やCT撮影、尿の細胞診などが有効です。
腎盂がんでは、血尿が発見の契機になることが多いものの、腎細胞がんは無症状のことが多く、よほど大きくならない限り血尿や痛みなどの症状がみられないことが少なくありません。腎細胞がんは健康診断の機会や他の病気のために行った超音波断層撮影、CT撮影などから見つかることが多いようです。
■手術と抗がん剤で根治を目指す
腎細胞がんも腎盂がんも治療の基本は手術です。手術では摘出できない場合や再発した場合には薬剤による治療を選択します。腎細胞がんには、インターフェロンによる免疫療法や分子標的治療薬(特定の分子構造のみを標的にして作用するように作られた新種の抗がん剤)が用いられ、腎盂がんには抗ガン剤が有効です。
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