うまく排尿できなくなる神経因性膀胱とは

心因性膀胱炎

うまく排尿することができなくなる「神経因性膀胱」。薬による治療法や自己導尿などでの対処法があります


神経因性膀胱とは、排尿に関わる神経経路のどこかが具合が悪いことにより、排尿のシステムが上手くいかなくなる状態のことです。例えば脊髄損傷、多発性硬化症、糖尿病による膀胱機能障害、直腸がんや子宮頸がんなど骨盤内手術後の排尿障害、二分脊椎などの病気がこれにあたります。

他にも「原因のよくわからない尿が出にくい人・出ない人」を総称して「神経因性膀胱」という病名がつくこともあります。このような状態になる方の例として、前立腺肥大症による排尿障害が長く続いたことにより膀胱が伸びて、上手く尿が出なくなることが挙げられます。
 

排尿のしくみと神経因性膀胱

腎臓で作られた尿は、尿管を通じて送られて膀胱にたまります。尿が膀胱にたまってくると、たまった量に応じて膀胱から脳へシグナルが送られます。適度な量になると排尿したくなり、トイレへいきます。排尿の準備ができて排尿しようと思うと、「排尿反射」という一連の反応が起きて、排尿されます。このとき尿道の出口が開いて、膀胱の筋肉である「平滑筋」が縮んで尿が排出されます。尿をためているときは脳にある排尿中枢といわれる場所から排尿しないようにするシグナルが送られています。尿をだすときはこのシグナルが止まります。このように、膀胱から脊髄を上がって脳へ、脳から脊髄を下がって膀胱へといくつかの神経経路を介してシグナルが送られています。これらのシグナルを自分で意識することは通常ありません。
 
神経因性膀胱は問題のある神経の部位により、大きく3つに分けられます。上から「(脳の)橋(きょうと読みます)より上の病変」「仙髄から上で橋より下の脊髄の病変」「仙髄の病変または(膀胱の)末梢神経の障害」になります※。(※2008年に開催された第4回失禁に関する国際コンセンサス会議 International Consultation on Incontinence: ICIの定義による)

他に神経因性膀胱の原因として考えられる状況としては、尿が出ない、出にくい場合は膀胱の出口が狭い場合、尿を出す力が弱い場合、尿を出す力が長く(必要なだけ)続かないことがあげられます。他にはまれですが尿意(尿がたまったときトイレに行きたくなる感じ)が弱い、またはない方もいるかもしれません。
 

神経因性膀胱の検査法・治療法

先ほどでてきた3つの部位「(脳の)橋より上の病変」「仙髄から上で橋より下の脊髄の病変」「仙髄の病変または(膀胱の)末梢神経の障害」のうち、どこの病変なのかをいままでのお話を伺ったり、身体の診察をしたりして決めていきます。また、それとともに尿検査や尿流量検査(尿を検査用のトイレにして、尿の勢いを見る検査)、残尿検査(尿をしたあとに下腹部に器械をあてて、膀胱内に残った尿を見る検査)をして、現在の膀胱の状況を簡単に把握します。

実際の診察の流れは「子宮頸がん術後の排尿異常」に詳しく書いてありますのでそちらもご覧ください。

男性であれば、前立腺肥大症による閉塞の有無も関連するため、話がやや複雑になります。

いずれの部位の障害にしろ、膀胱内圧測定と呼ばれる、尿をためている間、尿を出している時の膀胱の圧を調べる検査か、膀胱内圧測定をレントゲンで写しながらみるビデオウロダイナミクス検査を行うことが普通です。ただ、測定には特殊な器械が必要で、検査に時間も手間もかかるため、どこの病院でもやっているわけではありません。その検査で、尿をためている間には膀胱が十分緩んでいるか、膀胱から尿管に逆流はないか(ビデオウロダイナミクスのみ)、尿がもれないかをみますし、尿をするときには、きちんと排尿ができるのか、排尿の時に尿管への逆流はないか(ビデオウロダイナミクスのみ)、排尿の時に尿道は開くのか(ビデオウロダイナミクスのみ)などを確認していきます。

これらの検査で尿をためているとき、出す時の膀胱や尿道の様子を確認し、最終的にその方にどんな尿のケアが必要なのかを決めていきます。
 

神経因性膀胱と尿のケア

神経因性膀胱ベッドサイドマニュアルによれば、「神経因性膀胱患者の尿路管理の目標を重要度の高い順にあげると以下のようになる。①上部尿路機能の保持②尿路感染の防止③良好な蓄尿機能の獲得(尿失禁がない)④自排尿での管理(間歇導尿を必要としない)」とされています。

重要度が一番高いのは上部尿路機能つまり腎臓の機能です。神経因性膀胱で膀胱の圧力が高まったり、その結果として膀胱から尿管へ逆流する「膀胱尿管逆流」が起きた場合、逆流性腎症という腎臓の病気が起きてしまいます。逆流性腎症が起きると2つの原因で腎臓の機能が低下します。1つ目は腎臓から膀胱の中にうまく尿が流れられなくなること、2つ目は膀胱炎に引き続いて腎盂腎炎を起こすことです。これを有熱性尿路感染症といいます。有熱性尿路感染症を起こすと腎臓に傷がつきます。なんども有熱性尿路感染症を繰り返すことで、腎機能の低下が起きます。腎機能がある一定のレベルを下回ると身体から毒素を排出できなくなったり、身体の水分を排出できなくなったりします。

もともと腎臓は悪くなかったのに、腎機能障害になってしまうのはなんとしても避けたい。そのため一番大事なことは上部尿路機能、つまり腎臓の機能を守ることなのです。

次に大事なのは尿路感染の防止ですが、それも腎盂腎炎を起こさないことで結果として腎機能を守ることにつながります。

尿失禁がないのも大事なことです。尿失禁は生活の質をとても悪くします。外出や仕事、自宅でも尿失禁のない生活を送れるようにケアしたいものです。

最後に自排尿、つまり自分で排尿できることが挙げられます。ただし、順番は最後です。これは、腎機能を守るために、やむをえず自分で排尿する以外の方法を選ぶことがあるからです。尿が溜まった感じがない場合、排尿反射といって尿を出すためのスイッチが入らないことがあります。そうすると、尿を出そうとしていきんだり、お腹を手で押したりする人がいます。尿をするときに膀胱の圧力を一定よりも高くして出すことを「高圧排尿」といいます。高圧排尿によって、膀胱尿管逆流が起きたり、低コンプライアンス膀胱といって、膀胱の柔らかさが失われたりします。高圧排尿を防ぐための治療の一つが自己導尿になります。
 

自己導尿とは

「清潔間歇自己導尿」「間歇式自己導尿」などの言い方があります。いずれも同じです。尿を出すための専用のくだである「カテーテル」を尿道から膀胱に入れて、膀胱の中の尿を出す方法です。難しそうに感じられるかもしれませんが、一度覚えてしまえば自転車の運転と同じでできるようになります。一つの目安として、「自分で耳かきができる人」なら一般的にはできるようです。男性の場合、尿道は女性よりも長いのですが、尿道の出口を自分の方へ向けることもできてわかりやすいので、男性の方がすぐに覚える方が多いです。女性の場合は尿道の出口が男性よりはわかりづらいのですが、指で触ったりして場所とカテーテルが入ったときの感覚を覚えることで、できるようになります。

自己導尿の詳細は今回は省きますが、はじめに教わる時が肝心なので、用具の使い方、やり方をきちんと習っていただくとよいでしょう。自分で自分の尿を取る以外にも、ご家族に指導をして、ご家族に導尿をしていただくこともあります。

自己導尿がどうしてもできない場合、留置カテーテルといって、尿道からカテーテルを入れっぱなしにすることがあります。尿を貯める袋に繋いだり、カテーテルに蓋をして定期的にトイレに尿を捨てたりして管理をします。留置カテーテルのデメリットは、袋に繋いでいると膀胱が小さくなってしまうこと、尿路感染症を起こしてしまうこと(カテーテルは異物なので細菌がついてしまいます)、カテーテル管理が長期に渡ると、カテーテルの刺激で膀胱の腫瘍を起こすリスクが高まること、カテーテルの閉塞や膀胱の中に結石ができたりすることがあることなどです。

また、「膀胱瘻(ろう)」といって、下腹部から尿をためる膀胱に直接カテーテルを入れる方法もあります。留置カテーテルでの管理が長期にわたることがあらかじめわかっている場合に選択されます。
 

薬による神経因性膀胱の治療法

自己導尿以外に、自分である程度排尿できる場合は尿を出しやすくする薬を飲んでいただいたり、膀胱の圧が高い場合には膀胱の圧を下げる薬を飲んでいただく場合もあります。男性で前立腺肥大症の関与が強い場合には前立腺肥大症の治療を中心に行うこともあります。詳細は省きます。
 

神経因性膀胱の治療方針を変更するケース

神経因性膀胱の治療で大事なのは、はじめに現在の状態を調べて、治療の方針を決めてそれをしばらく行なった後に、改めて膀胱などの状態を調べることです。特に患者さんがお子さんの場合は成長の具合に合わせて年に1回などと決めてウロダイナミクス検査をすることもあるようです。有熱性尿路感染症を起こす場合にもあらためてウロダイナミクス検査をやりなおすことがあります。
 

最後に

「神経因性膀胱」という聞きなれない病名を言われ、びっくりしているかもしれません。尿の出方の管理によっても、腎臓の機能が悪くなることもあるため、先生は腎臓を守るためにいろいろ考えてくださるはずです。必要な検査をきちんと受けて、腎機能を守りかつ快適な生活を送れるといいですね。
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