髄膜炎とは……脳を覆っている髄膜に炎症が起きる病気
子供の頭痛や発熱は心配なもの。髄膜炎の症状も、風邪や胃腸炎などの症状に似ているため注意が必要です
髄膜炎の原因・種類……細菌性髄膜炎と無菌性髄膜炎
髄膜炎を起こす病原体には、細菌・ウイルス・カビなどの真菌などがあります。特に問題になるのが細菌による髄膜炎です。治療が遅れると死亡例や後遺症リスクが生じます。髄膜炎の種類は大きく下記の2つに分けられます。- 細菌性髄膜炎・化膿性髄膜炎
- 無菌性髄膜炎
細菌性髄膜炎は、細菌が血液に侵入して、血液から髄膜に侵入することで髄膜炎を起こします。原因の細菌は様々です。
- 生後3ヶ月ぐらいまで:大腸菌、B群連鎖球菌
- 生後3ヶ月以降:インフルエンザ桿菌(Hib)、肺炎球菌、髄膜炎菌
多くはありませんが、小さい子供、特に1歳以下の子供で注意が必要なのは結核菌です。多くの場合で母親が結核になっていることがあり、結核菌による髄膜炎は後遺症を残すことがあります。
年齢が高く、成人でもかかる可能性があるのは髄膜炎菌です。日本では幸い、髄膜炎菌が原因である髄膜炎は少ないのですが、海外、特にアフリカに渡航する時には注意が必要で、髄膜炎菌についてはワクチンがあります。詳しくは「髄膜炎菌ワクチンの効果・副作用」をご覧ください。
免疫不全では、クリプトコッカスというカビが原因になることがあります。
■無菌性髄膜炎の原因……おたふく風邪や手足口病など
無菌性髄膜炎は原因はウイルスであることが多く、特効薬はありません。よく知られているのが、おたふく風邪や手足口病のウイルスです。おたふく風邪はワクチンがありますので、予防可能です。
髄膜炎の症状……高熱・頭痛・繰り返す嘔吐など
頭痛、嘔吐などがある時には、熱を計ってみましょう
- 38℃以上の高熱
- 激しい頭痛
- 繰り返す嘔吐
- 乳幼児なら機嫌が悪い
- けいれん
- 意識が無いなどの意識障害
- 首が痛くて前に曲げられない
風邪や胃腸炎などの症状に似ていますし、乳幼児であれば、発熱とけいれんが起こっても熱性けいれんということもあります。その意味では、非常に診断が難しいのです。細菌性髄膜炎は、重症なことが多いので、普段より著しく元気がなく、意識状態が悪い時には、髄膜炎の可能性も疑う必要があります。
髄膜炎の検査・診断法……髄液検査・血液検査
脳の周りにある部分が髄液です。脳の中の黒い部分にも髄液があります。
腰の辺りの背骨に針を刺して、髄液を採取します。髄液は普段はきれいで透明ですが、細菌性髄膜炎があると膿のように濁っています。この髄液に細菌がいないかどうか、顕微鏡で見たり、栄養の入った容器に入れて菌が増えてこないか見ます。迅速検査によって、速やかに菌を同定することも可能になりました。原因の菌がわかると、その菌に効く抗菌薬が使えるわけです。細菌による髄膜炎の髄液では、髄液中の糖の値が下がっています。さらに、免疫成分のタンパク質が増加しているので、髄液中の蛋白の値が上がっています。
細菌性髄膜炎は血液に菌がいることが多いので、血液検査で白血球が多くないかどうか、CRPという炎症で上がるタンパク質が上がっていないかどうかも合わせて検査しますが、髄膜炎が疑われる場合は髄液検査が必要になります。脳浮腫と言って脳が腫れている場合は、髄液検査は危険なので、必要であれば頭部CTなどを行います。
細菌性髄膜炎と診断された場合、早期に抗菌薬による治療が必要です。詳しい治療法については、「髄膜炎の治療・合併症・予防法」で解説していますので、あわせてご覧ください。
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