家族の介護を理由に転勤を断った男性社員が、会社を相手取った裁判で勝訴しました。もしも働きながらの介護が必要となった場合、転勤や残業は避けられるのでしょうか?
大手食品メーカー、「ネスレジャパンホールディング」の男性従業員が、家族の介護などを理由に、配転命令の無効確認などを求める訴訟を起こしました。判決は「配転命令の無効」。裁判長は「原告が配転命令に従うことによって、妻や母の治療の援助や介護が困難になる可能性があった」と指摘。「配転命令による不利益が通常甘受すべき程度を著しく超え、配転命令権の乱用に当たる」と判断しています。 |
この事件、けっして他人事ではありませんよね。今後、介護は施設から在宅が中心になると言われています。もしも、会社から転勤を命ぜられた場合、介護を理由に断ることは可能なのでしょうか?
東京都がおこなった平成14年度版「均等法、育児・介護休業法への対応等
企業における女性雇用管理に関する調査」によれば、介護中の労働者が転勤を命ぜられることは皆無ではありません。育児、介護を行う従業員に転勤をさせることがあるか尋ねたところ、転勤が「ある」は17.3%、「転勤の対象としない」は32.5%、「転勤がない」は45.8%となっています。
しかし、じつは介護中の従業員の転勤について、事業主が配慮をおこなうことは、介護休業法できちんと定められています。
▲転勤についての配慮(法第26条)
事業主は、労働者を転勤させようとするときには、育児や介護を行うことが困難となる労働者について、その育児又は介護の状況に配慮しなければなりません。
▲配慮内容の例
・その労働者の子の養育又は家族の介護の状況を把握すること
・労働者本人の意向を斟酌すること
・就業場所の変更を行う場合は、子の養育または家族の介護の代替手段の有無の確認を行うこと など
これはすべての企業に適用されており、申出があった場合、事業主は拒むことができません。
男性の場合はとくに、介護を理由に転勤を断るのは勇気のいることかもしれません。しかし、大切な家族に大きな負担がかかるとなれば、話は別です。思い切って会社に事情を話し、窮状を訴えましょう。万が一、「クビだ!」などということになったとしても、法律はあなたの味方のはず。
ただし、適用を受けるには一定の要件を満たす必要があります。その要件とはどんなものなのでしょうか?
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