介護/訪問介護・デイサービス・ショートステイ

コムスンだけじゃない、介護業界は買収合戦

介護報酬不正受給により事業継続が不可能となったコムスンの買収に名乗りを上げる企業が殺到しています。でも、介護業界の買収合戦は今に始まったことではありません。その実態を解説いたします。

執筆者:西川 敦子

文章:川内 潤(All About「介護」旧ガイド)

新聞ニュース
ニュースを見るたびに次から次に名乗りを挙げる民間企業

次々に買収を名乗り出る民間企業

コムスンが他の運営会社へ事業を売却することを決定すると、数々の企業が買収に名乗りを上げました。コムスンと同様訪問介護事業大手の「ニチイ学館」、外食大手で数年前から有料老人ホーム事業に乗り出している「ワタミ」、イオン系のドラックストアである「ウエルシア関東」、また「三井物産」まで買収に名乗りを上げました。ただ、介護業界での買収合戦は今にはじまったことではなく、数年前から盛んになってきていました。

急展開には買収が近道

その原因の一つは、高齢社会にともない確実に伸びる介護業界で、急展開をして売り上げを伸ばしたいと考える民間企業が増えたことにあります。介護保険によるサービスを提供するには、自治体からの認定が必要です。さらに、低収入・重労働のイメージで人気が落ちている介護職を、新規事業所立ち上げスタッフの募集もかけなければなりません。コアな人材は既存の事業所から転勤させていくことが一般的ですが、その周辺の人材がなかなか集まりません。また、これ以上介護保険サービス事業所の認定を出してしまうと、介護保険財政がパンクしてしまうため、なかなか認定がとりづらくなってきました。これを聞くと「これから高齢者が増えてもっとサービスが必要なのに、認定が抑制されているなんて」と思われるかもしれませんが、これが現実です。

このような理由で、すでにスタッフ・お客さんがいて認定を取得して稼動している既存の事業を買収した方が急展開をすることができるというわけです。私も仕事柄さまざまな介護系民間企業の方々から「買収できそうな会社はないですか?」と何度かお話をいただいたことがあるほどです。

買収してもらいたい企業も

介護業界で買収が進む原因としてもう一つ考えられるのが、老舗事業者や異業種からの新規参入事業者の経営難です。買収されていく会社すべてがこれにあてはまるとは限りませんが、傾向としてみることができます。後継者に悩む老舗事業者、始めてみたけどお客さんが見つからなかった異業種参入企業が身売りをすることが少なくありません。
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