子供の病気/麻疹(はしか)

麻疹(はしか)に解熱剤は危険!(2ページ目)

発疹が出てから診断した麻疹には治療方法がありません。発疹の出る前、麻疹特有の一種の口内炎の時に診断すれば、理論的には症状を軽くできます。一方、解熱剤は重大な副作用を起こすので使ってはいけません。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

抗体ミサイルを使えないのが発熱の原因

ウイルスを体当たり攻撃してくる戦闘機とすると、抗体はいわば誘導ミサイルです。しかし、初めの感染では用意が間に合いません。これを撃ち落とす(血管内やリンパ節で防ぐ)ために、免疫系は、いろいろな物質を作ります。この時の物質は高射砲のようなものです。これらのうちある蛋白質は、視床下部の体温設定を変えてしまう作用があるので発熱するのです。

解熱剤のタイプはいろいろありますが、どれも体温設定を元に戻すわけではありません。通常は、この発熱物質の産生を抑制することにより、解熱するだけです。


「麻疹に解熱剤」は防御機能を下げて危険!

ウイルスと戦うための物質は実は攻撃するための物質だけではありません。実は防御に使う物質もあります。この場合の防御は粘膜の保護だけでなくて、血管の内皮の保護にも関係しています。もし、血管内皮の防護が手薄になると何が起きるでしょうか?

一番問題になるのは神経系です。神経系は脳血管関門といって毛細血管の構造が特殊です。簡単にいえば、毛細血管を作る血管内皮(注:血管内皮は全ての血管の内側にあります)が強くくっついていて血管外部へ病原体が侵入するので防いでいます。血管内皮の防御能が落ちると最悪、ウイルス性脳炎を起こすことになります。特に小児では、ウイルス感染でアスピリンを使うと、時に、ライ症候群という全身性でかつ死に至る病気は、もし助かっても重い後遺症が残る可能性があります。

成人の場合、ライ症候群が起こるのは稀とされていますが、危険性を増すのでアスピリンを飲んではいけません。


安全性が高い解熱剤はacetoaminophenだけ

acetoaminophen
acetoaminophen以外は使用してはいけません!
原因を問わず、発熱時に原則として解熱剤を使わないというのが、現代の定説です。ただし、氷嚢などで物理的に体温を下げることは問題ありません。この場合は、血管内皮を保護する物質の産生は低下しないからです。

ウイルス性疾患に対して安全性が高い解熱剤はacetoaminophenだけです。安全性は高いのですが解熱効果は弱く、下げるというより、投与時の体温より上げない程度の効き目です。


「麻疹かも……」と思ったら解熱剤は禁止!

最近の麻疹の流行は、予防接種が普及してない事と関係しています、麻疹感染時、喉の痛みには喉の細菌の変化もある程度関係しています。しかし、抗生物質の投与により病期が短縮することはありません。

発疹が明らかな麻疹は有効な治療法はありません。周囲に発疹から麻疹と診断された人がいて、発熱した人は、まず経過観察をしましょう。

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