抗がん剤/抗がん剤治療の目的・効果・費用

欧米の抗がん剤を日本で使えない!?(2ページ目)

製薬業界の研究は日進月歩で、新しい抗がん剤も次々に開発されています。最近では、欧米の製薬企業で開発される薬が多いのですが、向こうで発売されても、日本ですぐに使うことはできません。その理由は……?

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

同じホモサピエンスでも人種が違うと……

人種の違いが問題
日本人も欧米人も、生物学上は同じホモサピエンスですが、人種によってさまざまな身体的特徴が異なります。
欧米で認可された薬が日本でそのまま使えないのは、なんだか不条理な感じもします。厚労省がお役所仕事として捉えているのでは、という批判もなんだかわかるような気もします。

しかし、同じホモサピエンスでも、欧米人と日本人では、実は、生物学的には若干違いがあります。

もちろん、体の基本的構造はかわりませんが、体格が違いますし、酵素の効き方、すなわち酵素活性は人種によってずいぶん違います。

がんとは直接関係有りませんが、有名なのがアルデヒド脱水素酵素と呼ばれるものです。これは、お酒の強さと関係するものですが、日本人とロシア人とではその酵素活性がずいぶん異なることが分かってきています。

酵素が違うということは、薬の効き方もさることながら、解毒や代謝のされ方にも大きな影響を及ぼします。解毒や代謝が異なるということは、薬の効き方にも影響します。体格の違いもあいまって、欧米で使われている薬の適量が、日本人にとっても適量かどうかがわからない。また、イレッサのように予期せぬ副作用が大きく出てしまうこともあります。

ここを、厚労省にきっちりとチェックしてもらっておかないと、医師としてもちょっと使いづらい面があるのは正直なところです。


よりよい医療実現のために

よりよい医療実現のために
患者さんにとって、安全で安心できる環境の中で、効果の高い治療を受けられることは、非常に大切なことです。
もちろん、近年では厚労省の審査も、今まで認めてこなかった欧米での臨床試験のデータの活用も認めるようになったり、審査にかかる時間も短縮化されたりといったように変わりつつあります。

裏技的に、欧米からお薬を個人輸入してそれらを主治医の先生に頼んで使ってもらうというケースも報道されたことがありますが、正確に言うと、混合診療が全面解禁されなければ、基本的には難しいやり方になります。

安全性と1日も早い薬剤の認可というのは、抗がん剤にとっては非常に大切です。よりよい医療を作っていくためには、思い切った改革が必要なのだろうと感じる事例とも言えます。

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