癌(がん)/がんの手術治療

松井選手も受けた「内視鏡手術」とは(2ページ目)

最近話題の内視鏡手術。今まで、大きく切って行っていた手術を、小さな創でカメラを使って行う手術です。患者さんにとっては負担が少ない治療と考えられていますが、実際のところはどうなのでしょうか?

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

内視鏡手術は楽ちん

内視鏡手術は楽ちん
創が小さくてすむ内視鏡手術。しかし、創が小さいからといって、楽な手術かというとそうではありません。
内視鏡手術の最大の特徴は、創が小さいことです。創が小さいことは、美容的な意味も大きいですが、実は、もっと大きなところに利点があります。それは、筋肉の温存ができるということです。

肺がんや食道がんの手術も内視鏡で行うようになってきましたが、従来の大きく切開する方法と異なって、呼吸の際に使う筋肉を切らないため、術後の呼吸機能が温存できます。また、腹部の手術でも、創部が小さく筋肉の損傷も少ないため、術後の疼痛が少なく、患者さんが術後早期から歩行を始めやすいということも大きなメリットです。

しかし、手術が楽かというと、そうではありません。もちろん、極端に負担がかかるわけではありませんが、創は小さくても、行っている処置は、従来通りの大きな切開をおいて行っていることと同じです。むしろ、小さい創で、なんとかしようとしますから、従来の手術法よりは、少し時間がかかることも多いです。

内視鏡でできない場合もありうる

内視鏡でできない場合もありうる
内視鏡による手術を予定して手術を始めたとしても、患者さんの状態や手術中の状況によっては従来通りの手術を行う可能性があります。
どんな手術でもそうですが、内視鏡手術を予定して始めた手術でも、手術中の判断で術式を変更する場合があります。

特に、癒着が多い例では、手術操作を行うスペースがとれないので、いかんともしがたいということがあります。あまり、内視鏡手術にこだわりすぎると、手術時間が長くなってしまい、逆に患者さんへの負担は増えてしまいます。

また、手術中に予期せぬ出血がおこることがあります。もちろん、そういうことが無いように細心の注意を払いますが、出血があった場合には、躊躇無く、従来通りに大きい創での操作に移行します。

このような観点から、内視鏡手術で行う場合にも、かならず、従来の手術で行う器具もすぐに使えるように手術室に用意してあります。

外科医としては、もちろん、小さい創で手術を終えたいという気持ちはありますが、内視鏡手術にこだわりすぎることなく、安全性と根治性を最優先して手術をすすめていきます。

これからも内視鏡手術の適応は広がっていきますが、この二つの点は、是非、患者さんやご家族にも知っておいていただきたいと思います。


【関連リンク】
がんで手術を行うためには、一定の条件を満たさなくてはなりません⇒がんで手術ができないって、どういう状態?(All About がん・がん予防)

治療法は年々進歩しています。現在のがん治療の成績をご存じですか?⇒がん治療の成績は、5年生存率50%!?(All About がん・がん予防)

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