アレルギー性紫斑病とは……IgA血管炎・ヘノッホ・シェーンライン紫斑病
ぶつけたわけでもないのに、押しても消えない赤い斑点ができる場合、医師の診察を受けましょう
食物アレルギーや薬物アレルギーが原因となって発生する病気の一つである「アレルギー性紫斑病」。紫斑というのは、いわゆる内出血の青あざのことです。2011年から医学的な正式名称が「IgA血管炎」になりました。発見者に因んで、「ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(Henoch-Schonlein紫斑病)」とも言います。
全身の小さな血管、特に毛細血管に炎症が起こって、様々な症状を起こす病気です。免疫グロブリンの一種であるIgAと呼ばれるタンパク質が他の免疫に関わるタンパク質と複合体と呼ばれるものに作って血管壁にたまって、血管炎を起こします。
血管は全身にありますから、皮膚への血管が炎症を受けると、紫斑や浮腫が出てきます。腎臓への血管なら、血尿や蛋白尿がでてくるわけです。
アレルギー性紫斑病の症状・症例画像
赤い湿疹で押しても消えない場合は紫斑、出血斑の可能性があります(慈恵医大皮膚科提供) |
下肢に多いものの、上肢、お尻、身体に見られることもあります。
■関節の腫れ・痛みなどの関節症状
痛みで歩けないこともあります。
■腹痛、嘔吐、吐血、下血などの腹部症状
特に腹痛は強く、入院の原因になることも多いです。
■腸重積、腎炎などの合併症の症状
その他、腸重積や腎炎などの合併症の症状が出ることもあります。
アレルギー性紫斑病の原因・好発年齢・性別
アレルギー性紫斑病は4~6歳の男児に多いです。原因としては、感染症・薬剤・食物・昆虫などが挙げられます。特に感染症が多く、扁桃炎などの上気道感染後に起こるものが見られます。■感染症
多く言われているのが溶連菌で、マイコプラズマ、エルシニア、キャンピロバクター、レジオネラ。ウイルスでは、B型肝炎ウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルス、水痘、アデノウイルス、パルボウイルスなど
■薬剤
ペニシリン、アンピシリン、エリスロシンなどの抗生物質など
■食物
卵、牛乳、魚、小麦、トマト、じゃがいもなど
虫刺され、予防接種後に発症するという報告があります。遺伝的素因の可能性も言われています。
アレルギー性紫斑病の検査・診断法
血液検査では特有のものがないので、なかなか診断は難しく、症状を合わせて診断されます。名前の通り、ぶつけたり転んだりしていないのに押しても消えない赤い斑点がある場合は、「アレルギー性紫斑病」の可能性があります。ただし、紫斑だけなら、血を止める血小板が下げる「血小板減少性紫斑病」の可能性もありますので、覚えのない紫斑がある場合は、まずは医療機関への受診をおすすめします。
注意が必要なのは、腹痛から始まる場合です。後から紫斑が出てくる例もあります。胃腸炎より腹痛の強い場合は、この病気も疑いましょう。血を固める凝固因子という体内のタンパク質である「凝固第13因子」が、アレルギー性紫斑病では低くなっていることがあります。
アレルギー性紫斑病の治療法・後遺症・再発リスク
基本的には、症状に応じた対症療法です。まずは、アレルギー性紫斑病の原因を除くことが大切で、溶連菌などに対しては抗生物質を使用します。止血剤、ビタミンCなどの血管強化薬、抗アレルギー薬などの内服で治療することもありますが、その効果ははっきりしません。関節の痛みには、アセトアミノフェンなどの鎮痛薬が使われます。
また、炎症を抑えるために、ステロイドを使用しますが、特に、腹痛が強いなど重症感のある場合は、ステロイドを使用します。
腹痛が強く、上記の凝固第13因子が低い場合には、凝固第13因子を補充することもあります。
この病気は、数週間で後遺症無く治ることが多いですが、しばしば再発が見られます。腎炎を合併してしまった場合、治療も複雑になり、安静の必要がなります。また、治るのに時間がかかったり、慢性化する場合もありますので注意が必要です。
足にぶつけたわけでもないのに青あざが出ている場合、血小板の数が減っているか、この「アレルギー性紫斑病」の可能性が否定できないため、医療機関を受診されることをおすすめします。