糖尿病/糖尿病の食事療法の基礎知識

満腹感のヒミツ

長い間よく分らないままに『すい臓』に作用していると考えられていたホルモンが脳神経に満腹感を伝える伝達物質であることが判明しました。ペプチドYY3-36あるいは単にPYYと呼ばれるものです。

執筆者:河合 勝幸

長い間よく分らないままに『すい臓』に作用していると考えられていたホルモンが脳神経に満腹感を伝える伝達物質であることが判明しました。ペプチドYY3-36あるいは単にPYYと呼ばれるものです。

これが錠剤になれば、頼りにならない『意思力』で、抑えきれない食欲と格闘することもなくなります。夢のような話ですが、実はまだ本当に夢物語なのです。
このPYYはインスリンと同じようなペプチドホルモン(アミノ酸が鎖のように連なったもの)ですから、このまま飲んでも胃腸で消化されてしまいます。

2003年9月に米医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』で報告されたのは、食事の2時間前にこのPYYを注射するとだれでも食欲が抑えられて、摂取カロリーが30%も減ったというものです。
この研究はロンドンのハマースミス病院の医師らによって行われました。
『PYY』は消化管の内膜にある内分泌細胞から放出されて、血流にはいって脳に達し、満腹感を感じさせる働きがあるとされます。

同病院のスティーブン・ブルーム医師らは、ボランティアの12人ずつの肥満者と普通の人たちに『PYY』とプラセボの『生理食塩水』を交互に食事の2時間前に注射したところ、肥満者も普通人も同じように『PYY』を注射された時はビュッフェ方式で好きなものを食べた時の量が2/3になったというものです。

まだ厳密に管理された実験ですから、薬の安全性も、数ヶ月や年単位で投与した時の効果の持続性も分っていません。
とても面白いのは、空腹と満腹をシグナルするホルモンが少なくとも半ダースぐらいは関与していることが分かってきたのです。
この『PYY』はその食欲抑制効果が10時間ぐらい持続するのですが、基本的には食事から次の食事までの摂食を抑える働きと考えられています。
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