食事の時は大さじ1杯を心掛けよう。飲んで良し、サラダでよし。 |
このテーマは日本の研究者が先鞭をつけたものです。たとえば、普通のご飯よりも酢めしのほうが食後の血糖上昇が少ないのはグリセミック指数の研究会でも以前から報告されていました。
食酢(以下、酢とします)はどの家庭にもある調味料ですし、日常的によく使われています。これはとても興味をそそる研究ですね。
なぜ酢が血糖上昇を抑えるかについては、いろいろな機序が指摘されています。まず、酢の有効成分は酢酸(さくさん)であることは間違いなさそうです。ふつうの食酢には酢酸が5%位含まれています。そして、酢を使った料理を食べると胃から腸への移動が遅くなります。これだけでも食後の血糖上昇のピークを低くできます。
次に酢は小腸での2糖類分解酵素の作用を抑えます。ご飯のデンプンは単糖のブドウ糖が長く大量につながったものです。それが口や胃の中からすでに小さなブロックに切り分けられ、最後はブドウ糖2個の麦芽糖から2糖類分解酵素によってブドウ糖単体になって吸収されます。
2型糖尿病の人はタケダの"ベイスン"のようなアルファーグルコシダーゼ阻害薬を服用していることが多いと思います。この薬はまさしく2糖類分解酵素の働きを阻害することにとってブドウ糖に分解されることを抑えて食後の血糖上昇をゆるやかにするものです。
実験によると食事の2分前に酢大さじ1杯を水で割って飲むと"ベイスン"と同じ働きをするのです。
さらに酢は筋肉細胞において、ある酵素の活性を高めることによってブドウ糖の分解を抑え、ブドウ糖をグリコーゲン(動物性のデンプンのようなもの。水溶性)に合成することを促進します。その結果、血液から筋肉細胞へのブドウ糖の取り込みが増加します。つまり、酢を飲むとメタボや太った2型糖尿病に見られる"インスリン抵抗性"が改善することが期待できるのです。
その上、肝臓にも作用してブドウ糖の放出を抑制する仕組みも解明されていますから、まるで糖尿病薬"メトホルミン"みたいですね。
酢が代謝に関与する研究は日本の研究者が世界の最先端ですが、臨床的な立場で糖尿病と酢の関係を調べている論文はアメリカ糖尿病協会(ADA)の出版物に多く載っています。
変った研究では血糖コントロールのいい2型糖尿病者はベッドタイムに大さじ2杯のリンゴ酢と30gのチーズ(タンパク質8g、炭水化物1g、脂肪1.5g)を摂取すると、明朝の空腹時血糖が明らかに下がるというものがあります。
[Diabetes Care 11月号 2007]
チーズを一緒に摂るのは、経験的に空腹時に酢を飲むのが不適切だからです。でも、これは少人数、短期間のものですから、エビデンスというより問題提起のレベルだと思います。
日本人のようにご飯を主食とする人達、つまり高炭水化物食の人達には食前にリンゴ酢20g、水40g、サッカリン小スプーン1)を飲めば、炭水化物87gの食事を摂ると明らかに酢を飲むと食後30分、60分の血糖上昇が抑えられたという報告もあります。
この場合は特にメタボリックシンドロームのようなインスリン抵抗性の高い人に効果がありました。
[Diabetes Care 27.281-282.2004]
糖尿病のある人は経験的に酸味の発酵食品は血糖を上げないことを知っています。
私達は黒酢のような米から作った高価な"飲む酢"を知っていますが、アメリカの研究者によると米酢は糖質が多いのでワインビネガーやリンゴ酢の方がいいとのことです。
でも大スプーン1杯の糖質なんて高が知れていますから、好みで選んでください。
私は500ml 300円ぐらいのリンゴ酢で実験中ですよ。
関連リンク
- メタボリック・シンドロームは食べて治そう
from All About[糖尿病] - 食後の高血糖を下げたい!
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