売れずに撤退? 夢の吸入式「Exubera」
エクスベラの開発・製造はNEKTARです |
エクスベラ「Exubera」は遺伝子組み換え型のヒトインスリンの吸入用粉末です。日本でも発売に備えて第3相試験に入っていました。アメリカでは2006年1月27日にFDAから発売承認が下りましたが、薬局に納品されたのはかなり遅れた模様です。販売の出足の悪さは当初から指摘されていて、当サイトでも「吸入式インスリンExubera、イマイチの評価」で取り上げたことがあります。
この史上初の吸入式インスリンはあまりにも売れませんでした。ファイザーはいずれ年商20億ドル(2,200億円)のビッグ商品ともくろんでいたのですが、今年の1月から9月までで1,200万ドル(13億円)だけでした。サノフィー・アベンティス社から巨額の資金を投じてExuberaの世界販売権を買い取って始めた事業ですが、総額28億ドル(3,000億円)もの投資が無駄になります。折角のインスリンは破棄されるそうです。
最初の6ヵ月は医師へのマーケティングに力を入れたのですが賛同を得られず、アメリカの医師が処方するインスリンの1/500しかエクスベラは得られませんでした。
エクスベラより後にFDA承認をもらったメルク社の新しい経口糖尿病薬「Januvia ジャニュービア」は順調に売上を伸ばして、すでに全米で40,000/週の処方が行われるのに対しエクスベラの処方はその1/25しかありません。
発売当初から吸入式インスリン Exuberaはその使い勝手の悪さ、費用の高さ、安全への懸念がついて回っていました。ウォールストリートのアナリストはExuberaの売上げ見通しをどんどん切り下げてきましたが、ファイザーはあきらめない姿勢をつらぬき、医師への働きかけと共に今夏には一般消費者(糖尿病患者)への宣伝も始めていたところです。
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