母親に糖尿病があると『巨大児』が生れやすいことはよく知られていますが、父親が2型糖尿病(後に発症しても)だと『低体重児』が生れやすいそうです。
[British Medical Journal 2003;326:19-20]
胎児の成長は母体の環境次第だと考えられてきましたが、遺伝要因も大きく影響するという発表がありました。
イギリスの研究者たちが8,000組以上の夫婦の糖尿病と新生児の体重を調べた結果、意外な事実が浮かび上がってきました。父親に2型糖尿病があると、平均して186グラムも小さな新生児が生れていたのです。
もちろん、父親に旺盛な食欲があろうがなかろうが胎児に影響するわけもありませんから、遺伝が強く疑われます。発表者のひとり、Dr.ジョージ・デイビー・スミスもそのように考えています。
2型糖尿病というと、すぐ肥満のイメージに結びつきますが、かなり前から2,500グラム以下の低出生体重児(いわゆる未熟児)はむしろ後に2型糖尿病になりやすいことが知られていました。
今までは母親の食糧事情の悪さ(慢性的な食糧不足)が胎児のインスリンレジスタンスのスイッチを入れるのではないかと考えられてきましたが、今回の研究は父親の2型糖尿病になりやすい遺伝子が胎児の成長にも影響することを示唆しています。
スミス教授によると、"胎児の成長は『インスリン様成長因子』にコントロールされているが、『インスリン』の関与も十分に考えられる"のだそうです。だから出生時の低体重も、後年の2型糖尿病の発症も驚くことはなく、遺伝子のなせる業(わざ)なのでしょう。