糖尿病/糖尿病の原因・基礎知識

糖尿病と遺伝の関係……あなたのせいではありません!(2ページ目)

なぜ糖尿病になったのか納得していますか? できませんよね! 子供への遺伝も心配という方も少なくないでしょう。糖尿病の遺伝的要因についてよく耳にしますが、「親が糖尿病なら子供も糖尿病」という単純なパターンではありません。糖尿病と遺伝の関係について解説します。

執筆者:河合 勝幸

2型糖尿病と遺伝

遺伝性が強いことは確かです。しかし、ライフスタイルのような環境要因も大きいのです。たとえば、50年前の世界では地球規模で2型糖尿病は珍しい病気でした。

それが経済的に豊かになって、牛肉などのおいしい高脂肪食をたっぷりと、車による楽な移動、座りっきりの仕事やテレビの前の毎日になると、どの国でも2型糖尿病が急増します。

2型糖尿病は中高年の病気(当時は「成人病」と呼ばれていました)と考えられていましたが、今では子供が発症してもニュースにならなくなりました。

遺伝子が変ったわけではありませんから、アメリカナイズされた環境要因、すなわち飽食、車社会の「カウチポテト」のライフスタイルです。間違いなく肥満が主犯のようですね。2型糖尿病そのものが遺伝するのではなく、遺伝するのはインスリン抵抗性だと考えられています。肝臓のインスリン抵抗性が大きいと空腹時血糖値が高くなり、筋肉のインスリン抵抗性が大きいと食後の血糖値スパイクが起きやすくなります。

1型糖尿病は子供へ遺伝するか

アメリカのデータでは、男親が1型の場合に、子供が同じ1型を発症する可能性は17人に1人の割合です。母親が1型で、25歳前の出産の場合は、その子が1型を発症する可能性は25人に1人。同じく1型の母親が25歳以上で出産した場合は100人に1人となります。もし、親の1型発症が11歳以前だった場合は、子供の発症のリスクは2倍になります。もし、両親が共に1型の場合は、子供が1型になる可能性は、4人に1人から10人に1人の間です。

1型で同時に甲状腺や副腎ホルモンの働きも悪い「多腺性自己抗体症候群」の人は、その子供の1型糖尿病の可能性は2人に1人と高くなります。
1型に関連する遺伝子(複数)も解明されつつあり、目印になる抗体も、インスリンやすい島細胞(ランゲルハンス島細胞)、ベータ細胞の特別な酵素に対するもの等も計測できるようになりました。

これが見つかっても、必ず発病するわけではありませんが、ただ今のところ、予防も発症を遅らせることも出来ません。

2型糖尿病は子供へ遺伝するか

両親共に2型の場合は、子供が2型糖尿病になる可能性は2人に1人と高くなります。片親が糖尿病で50歳前に2型を発症した場合は、子供の2型の可能性は7人に1人。50歳以上での発症の場合は、13人に1人と低下します。母系の2型糖尿病の遺伝は、より高くなるという見方もあります。

糖尿病は家族歴がなくても安心してはいけません。特に日本人は高リスクの民族です。

また糖尿病はある意味では「老人病」でもあり加齢により発症する人は増えます。誰でも定期検診を忘れないようにすることが大切なのです。


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