プレ・オリンピックならぬ、プレ(前)糖尿病が注目されています。ウルトラ肥満に悩むアメリカでは国家プロジェクトで肥満退治と糖尿病予防に乗り出しました。
日本では糖尿病予備群(軍)とか境界型糖尿病などと、切迫感のない表現が好んで使われますが、緊急事態のアメリカではずばり『プレ糖尿病』と言うようになりました。
『境界型』というのは文字通り血糖値が正常値を超えているが糖尿病と診断する基準までは達していないグレーゾーンを指す言葉ですが、先進諸国ではもう使われなくなった表現です。
そのひとつの理由は、患者の心理として『糖尿病』を否定したい、重大な事柄からとにかく目をそらしたいという願望がだれにでもあるからです。『境界型』というあいまいな言葉にしがみつくと、生活習慣の改善がどうしてもおろそかになってしまいます。
『わたし、ホントは境界型なの』なんていうセリフを何度耳にしたことでしょうか。
ホントもウソもありません。いえ、いえ、あなたは立派な2型糖尿病ですよ。
たとえてみれば、『境界型妊娠』とか『妊娠気味』なんて、意味あり気な笑い話ですが、まだ『高血糖気味』なんていう言葉をれっきとした医者が平気で口にしているようです。
10年間も『境界型』をやっていると多くの人たちが真正の2型糖尿病になるのですから、決して半端な状態ではないのです。
糖尿病大国のアメリカでは『糖尿病予備群(軍)』のレベルを『耐糖能障害』と呼んでいましたが、それではパンチが弱いのでズバリ『プレ糖尿病』とネーミングを替えました。
更に、2003年11月号のDiabetes Care(アメリカ糖尿病協会編集)では『プレ糖尿病』の判定基準を従来よりも厳しくすることにしました。
その結果、40歳から71歳までのアメリカ人の40%─人口にして41百万人がプレ糖尿病の状態であることが分かったのです。
すでにこの世代の10%以上の人が診断のついた糖尿病者ですから、なんと中高年の半分はお仲間です。
どうしましょう? 早速、製薬会社の株を買いましょうか。