不妊症/不妊症の基礎知識・治療法・薬

不妊治療新薬開発の状況

日本の不妊治療薬は欧米に比べてどのようになっているのか?その疑問にお答え致します。

執筆者:池上 文尋



先日、がん治療薬について世界的に認められている効能・効果に関しては日本も認めていくということで厚生労働省から発表がありました。それに先立ってベストセラー漫画「ブラックジャックによろしく」の中でガンの患者が国の認めていない新薬を使ってお金がなくなっていく様を表現した事は記憶に新しいことです。

じゃあ、不妊治療薬に関してはどうなのでしょうか?
実は日本の不妊治療薬の開発も遅れているといわざるをえません。下記の薬の状況をごらんください。排卵誘発に使う薬剤(HMGとHCG等)です。

日研HMG     発売日 1981年 (HMG)
ヒュメゴン     発売日 1984年 (HMG)
フェルティノーム  発売日 1990年 (FSH)
プレグニール    発売日 1976年 (HCG)
HCGモチダ    発売日 1965年 (HCG)
クロミッド     発売日 1968年 (クロミフェン)

見て頂ければわかりますが、排卵誘発の部分は1990年から治療薬剤は進んでいない状況です。もう数十年も同じような薬剤しか使えない状況なのです。これではドクターも治療の選択肢の部分で厳しい面があります。

一方世界に目を向けて見ましょう。
現在、アメリカの排卵誘発薬剤は下記の薬剤がメインになってきています。

GONAL-f(セローノ社) Puregon(オルガノン社) 
リコンビナントFSH
FSH(卵胞刺激ホルモン)の遺伝子組み換え型製剤。マウス細胞から作りだす。100%ピュアーな製剤。HMGは今後、これらの製剤に切り替えられていくと考えられる。

Ovidrel/Ovitrelle(セローノ社)
リコンビナントHCG
HCG(胎盤性性腺刺激ホルモン)の遺伝子組み換え型製剤。この製剤も今までの尿由来の製剤から切り替えられていくと考えられる。

Luveris(セローノ社)
リコンビナントLH
LH(黄体形成ホルモン)の遺伝子組み換え型製剤。この製剤が使えるとリコンビナントFSHと組み合わせてオーダーメイド的な排卵誘発が可能になることがメリットです。また、排卵を促すLHサージもこの製剤で再現できる事になります。

Crinone(セローノ社)
プロゲステロンゲル製剤です。この製剤はルテアルサポートに役立つ製剤です。子宮内膜が着床とその後の生育にうまく順応していくためのプロゲステロンの補充に役立ちます。今、日本では坐剤もないので、一部の先生は自分で手作りしているような状態です。

Cetrotide(日本では塩野義製薬)
GnRHアンタゴ二スト製剤です。体外受精時の自然排卵を抑制する効果があり、確実に採卵するために必要な薬剤です。今、塩野義製薬が開発中で近いうちに上市されてくると思われます。またこの薬については特集を組みたいと思います。

アメリカの情報を見ると上記のような薬剤があるわけですが、近日中に日本での使用が可能になりそうなのはCetrotideとPuregonぐらいで、他のものは時間がかかりそうな感じです。
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