チョコレート嚢胞のイラストです。 |
今回は前回に続きまして、チョコレート嚢胞(子宮内膜症)と不妊治療の関係、治療についての情報をお送り致します。
不妊との関連について
チョコレート嚢胞(子宮内膜症)として不妊との関連性は下記の通りです。
●子宮内膜症は炎症、癒着が起こりやすくなります。癒着はときとして卵巣や卵管にまでおよぶために受精卵が卵管に取り込まれるのが障害されてしまいます。
●チョコレート嚢胞のように内膜症が卵巣にあると卵巣表面が硬くなるためか排卵できにくくなります。うまく排卵できなかった卵胞はそのまま2~3cm以上の大きさの未破裂黄体化嚢胞になります。その月経周期では、卵子が外に出ることが不可能となります。
●骨盤内は慢性的に炎症が起こっている状態であるため、異物を食べるためのマクロファージ(貪食細胞)やサイトカインなどの炎症性物質が腹腔内に出てくるため精子が食べられてしまったり、受精が障害されたりします。
●内膜症による性交痛によるSEX数の減少が見られます。癒着による引き攣れや炎症によって性交痛がおきやすくなるからです。
これらの原因によって不妊との関係があります。よって子宮内膜症治療は出来るだけ早く行うことが大事とも言えます。
治療法について
治療には一般的な子宮内膜症の治療としての薬物治療が主体となりますが、周辺臓器の癒着を招くことが多いこと、再発しやすいこと、茎捻転の可能性などを考慮すれば、やはり外科的治療(手術)がメインとなります。
薬物療法(ホルモン療法)としてはGnRH誘導体やエチスナロン誘導体(タナゾール)が用いられます。両者とも女性ホルモン(エストロゲン)の分泌を抑制し,人工的に閉経状態を作り治療する方法です。また対症療法として痛みを軽減するために鎮痛剤を併用することが多いですが、根本治療ではないので症状が強い場合には外科的治療を考えなくてはいけないようです。
両者共に骨粗鬆症・男性化・肝機能の異常などの副作用があり、慎重に投与され、長期服用は好ましくありません。服薬を中止すると再発することもあります。
外科的治療は様々な要因で決定しますが腹腔鏡手術もしくは開腹手術の選択になるかと思います。最近では傷跡の少なさや術後のリカバリーという意味で腹腔鏡手術を選択されるケースが増えています。
腹腔鏡による手術では、癒着剥離、チョコレート嚢腫のアルコール固定術、可能であれば小さな術創で嚢腫を摘出する方法などが考えられます。
順天堂大学婦人科内視鏡チームサイトに画像があります。
http://www.j-endoscopy.com/hpp3/hpp3-naimakusyou.html
開腹手術では、癒着剥離、卵巣チョコレート嚢胞部分の摘除が主となり、年齢や症状を考慮して卵巣摘除(片側または両側)、子宮全摘(または膣上部子宮全摘)などが併術されます。
腹腔鏡手術のイラスト |
まとめ
今回、友人がクリニックでチョコレート嚢胞という診断をもらい、どうすればいいのか?と相談を受けたので調べた結果を記事にしてみました。チョコレートと名前は可愛いですが、疾患自体は結構つらいものなので、本人にしてみれば早く解決したいという要望が強い疾患だと思いました。友人は早速、腹腔鏡手術を受けると決めました。
早く良くなって赤ちゃんが授かればいいなと思っております。腹腔鏡手術後の半年はゴールデンタイムといって妊娠しやすい時期だそうですから、是非頑張ってほしいものです。
関連サイト
チョコレート嚢胞とは(1)