近年流行しているノロウイルス感染症は、よほど重篤な合併症のない限り生命に影響を与えることはまずありません。しかし感染が成立すると下痢が続き、日常生活にとっても大きな影響となることがあります。ノロウイルスの感染予防法と、かかってしまったときの対策についてご説明します。


ノロウイルス感染症(胃腸炎)にかかる人はどのぐらい?

感染性胃腸炎
ノロウイルスによる感染性胃腸炎では、倦怠感や微熱の他、下痢や嘔吐などの腹部症状を伴うことがあります
ノロウイルスを含めた「感染性胃腸炎」という診断は、感染症法では5類感染症という範疇に分類されます。感染性胃腸炎による5類感染症では、全国約3,000ヶ所の定められた小児科での患者数が報告されます(このことは小児科定点(観測)と呼ばれます。トリインフルエンザを除いた一般的なインフルエンザ感染症もこの5類感染症に含まれ、定点観測の対象となっています)。

成人での実数を把握することはできないのですが、2006年のピーク時にはこの小児科1定点当たり、1週間で20人を超す感染性胃腸炎の報告がありました。この定点観測では「感染性胃腸炎」としてまとめて報告されますので、ノロウイルス以外の病原微生物が原因であった可能性もあります。しかし、社会背景を考慮しても流行期には、わずか1週間で10万人以上がノロウイルスによって感染性胃腸炎を発症したという可能性があります。

参考までに、成人も含めて「(※)食中毒」として報告され、ノロウイルスが原因と考えられた患者数は年々増加し、2005年には8,700人、2006年には2万7千人を超えています。次の項目では、この食中毒として報告されたケースでのノロウイルス感染症の特徴についてご説明します。

(※)史上最強の菌の1つであるボツリヌスなどの細菌性食中毒については届出義務があるのですが、ノロウイルスが原因の感染性胃腸炎には、前述のように定点観測の対象となる小児医療機関を除いて届出義務がありません。また、ノロウイルス感染症そのものについても、「食中毒」として報告された後にノロウイルスが原因と特定される場合や、当初から「感染性胃腸炎」として考えられた場合など、状況によっても明確に「食中毒」と「感染性胃腸炎」を区別することが困難です。こうした理由のため、ノロウイルス感染者の正確な人数を把握することはできません。


ノロウイルスによる食中毒の特徴

食中毒の原因はさまざまで、1人だけが発症することもありますが、数名以上が同時期に食中毒にかかることもあります。例えば、あるレストランで食事をした8人のうち、同じ料理を食べた5人が同時期に食中毒にかかったとします。この場合、食中毒の発生件数1件に対して罹患数は5人となります。

ウイルスを調べるための検査法が発達してきたこともあって、ノロウイルスによる食中毒は2006年までの発生件数および罹患数ともに年々増加していましたが、その特徴として他の細菌性食中毒と比べて発生件数のわりに罹患数が多いということがあります。つまり、非常に感染力の強いウイルスであり、油断をしてしまうと一気に大流行を起こす可能性があるということです。


ノロウイルスはクチからの感染が大半

ノロウイルスは嘔吐物が乾燥したときにウイルスも一緒に飛散するという空気感染の可能性も指摘されていますが、原則として口を通して腸から感染するウイルスです。経口摂取すると約15~20時間程度で便中に排出され始めますが、症状が現れるのは感染から1~3日ぐらい経ってからです。

発熱や倦怠感などで発症することもありますが、いわゆる風邪とは異なり咳や痰を伴わないことも多く、腸管感染症としてお腹のグシグシとした感じ・嘔吐・下痢(腸管が未発達な小児では嘔吐が主体)などの症状が出現します。成人の下痢は、多くの場合は数日間で治まりますが、時には数週間にもわたって症状が続くこともあります。

ところが、ノロウイルスが腸管に侵入したにも関わらず、無症状という人の存在が以前から知られています。このことを「体が強い」と解釈してしまうと、更に流行を拡大してしまう危険性があります。


次のページではノロウイルスの盲点をご紹介します。