【虫垂炎の鑑別疾患と合併症・後遺症】
虫垂炎の鑑別診断は、腹痛を起こす疾患、特に右下腹部の腹痛を起こす疾患ということになります。女性では、鑑別診断に右の卵巣、右の卵管の疾患も考慮します。
◆ 憩室炎といって、腸が外側に膨らんだ部分(憩室)が炎症を起こす病気があります。憩室炎が、上行結腸(大腸の右側)の虫垂に近い部分で起きると、臨床的には虫垂炎と区別ができません。
◆ 虫垂癌は稀な疾患ですが、炎症が加わると虫垂炎と同じ症状となります。散らして治ったと思って放置していたら、癌が進行して手後れという不幸な患者さんがいます。ですから、手術で切除した虫垂の病理医による外科病理学的な診断は、かならず行うべきです。
◆ 虫垂炎で怖い合併症は、虫垂が破れた時に起きる、腸の内容物による腹膜炎です。腸の内容物は、細菌と消化液が混じったものです。そのために、細菌性腹膜炎+化学的腹膜炎が同時に起きます。最悪の場合は、細菌の毒素によるショックで死亡します。腹膜炎時に各種治療法で救命できた場合も、腸管の癒着による後遺症が患者さんを一生涯に渡って悩ませます。
【晴れた日に腫れた虫垂炎で外科医は呼ばれる!】
『よく晴れた日に、外科医がポケットベルを持ってゴルフ場に出かけると、虫垂炎の緊急手術で病院から呼び出しを受ける』ということがあります。
晴れの日は、高気圧が優位、雨の日は低気圧が優位です。
また、自律神経は交感神経系と副交感神経系からなりますが、高気圧の時に交感神経系が優位になり、低気圧の時に副交感神経系が優位になりますね。
交感神経系優位の時は、顆粒球(細胞質に顆粒がある好中球、好酸球、好塩基球の3種類の白血球)が優位(体の中で活躍すること)になります。
副交感神経系優位の時は、リンパ球(抗体を作る液性免疫や直接リンパ球が免疫に関与する細胞性免疫に関係した白血球)が優位になります。
晴れた日、すなわち高気圧の時は、好中球ががんばるので、虫垂炎の炎症が強くなります。結果として、臨床症状が強くなります。
以上は、新潟大学の安保徹先生が『未来免疫学』(インターメディカル株式会社)という本でお書きになっているお話です。学会誌では臨床病理45巻3頁~12頁(1997年)に「環境、体調によって変化する免疫系そして疾患群」という論文として載っています。
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