W杯も始まり、日本の予選突破に期待が集まっています。
そんな中、主力選手2名が虫垂炎にかかるというニュースが日本中を驚かせました。そこで、誰もが知っている虫垂炎を取り上げます。
虫垂炎という病名は誰もが知っていますが、病気の実体をご存知の方は少ないでしょう。そこで、今回はなかなか知る機会のない虫垂炎の解剖、生理、病理、そして最新の治療方法までを解説します。虫垂炎とお天気との意外な関係も解説しましょう。
【解剖と生理】
虫垂は解剖図で見ると小腸(回腸)と大腸(盲腸または上行結腸)の繋ぎの部分(回盲部)にあります。おなかを出した時、おへそと右前上腸骨棘(骨盤の出っ張り)を結ぶ線上の外側1/3の位置にあります。
虫垂には、解剖学的には口の中の扁桃と同じく、粘膜上皮下に発達したリンパ組織(粘膜関連リンパ組織)があります。この事から、消化管の免疫機能に関係しています。ただし、虫垂切除により消化管の免疫能が低下して、消化管感染症にかかりやすくなるという報告はありません。逆に扁桃と同じく、粘膜関連リンパ組織が発達しているために炎症が起きやすい場所です。
消化管の基本構造は、哺乳類では似ています。ネズミのように、虫垂と同じ部位が発達して突出した時に、口側と肛門側の区別ができないために盲腸と呼びます。
【虫垂炎の真犯人は誰?】
びっくりするかもしれませんが、個々の患者さんの虫垂炎の起炎菌(原因菌)はわかりません。
約10の11乗の数の菌が腸管の粘液中1ml(1グラム)中にいます。そのためにどの菌が犯人でどの菌がたまたま通りかかったのか区別できません。東京の雑踏の中で犯人を捕まえるのが、難しいのと同じです。
もう一つは、手術で切除した虫垂は、急性炎症という火事の現場の後だという事です。そこから見つかる菌は、単なるやじ馬の可能性があります。
また、治療に抗生物質を使って様子を見た後で手術した場合は、真犯人(起炎菌)は立ち去った後の可能性があります。