エコノミークラス症候群が疑われたら……?
エコノミークラス症候群による肺動脈圧上昇が心エコー検査で発見されることがあります |
その次に行われるのは胸部CT検査(造影検査となることも)や心エコー検査です。心エコー検査を行う目的ですが、肺の血管(肺動脈)は心臓にも連結していますので、心エコー検査でも心臓に負担がかかっている所見を得られることがあります。また、エコノミークラス症候群と同じような症状は心筋梗塞でも起こることがありますので、こうした心臓疾患ではないことを確認するために(除外診断と呼びます)行われます。
確定診断には肺動脈造影
述べてきた検査によって、エコノミークラス症候群が強く疑われた場合、カテーテルを用いた肺動脈造影検査によって肺動脈が血栓によって閉塞していることを確認することができれば、これによって確定診断となります。カテーテル検査をご存知の方も多いかと思いますが、端的に説明すると、足や腕などの血管から、点滴に用いる針よりも少し太いチューブ(管)を目標とする肺動脈のところにまで挿入していきます。この先端部から造影剤を流すことで肺動脈の形状を肉眼的に確認することができます。この他にも、肺シンチグラムという検査を行うこともあります(時間もかかり、他の検査を優先することが多く行われないことの方が多いです)。シンチグラムは腫瘍、甲状腺(ホルモン)、炎症性疾患などを診断するために行われる検査で何種類もありますが、エコノミークラス症候群に関わるシンチグラム(以下シンチと略します)には大きく2種類があります。1つは血流シンチ、もう1つは換気シンチと呼ばれ、両者とも放射性物質を用いて文字通り血流・換気(空気)が肺の中でどのように分布するのか調べることができます。
血流シンチで特徴的なくさび形の欠損像(血流が通わなくなった部分)を確認することができれば確定診断に至りますが、COPDなど基礎疾患があると、急に血液が流れなくなったのか、もともと血流が途絶えていたのか判断できないこともあり、この場合には換気シンチを併用することで、肺内の血液の分布状態と、空気の分布状態(換気)のバランスに狂いが生じていないのか確認することができます。
レントゲン・CT・エコー・シンチ・カテーテルなど、非常に多くの検査が必要となるエコノミークラス症候群、治療も含めると費用も莫大なものになってしまいますから、やはり予防をすることが一番です。被災によって限られたスペースでの生活のため、エコノミークラス症候群を発症された方もいらっしゃいますが、決して稀な病気ではありません。ご自身のふくらはぎを触ってみて、血管がボコボコと触れるような時(静脈瘤:じょうみゃくりゅう)には注意が必要です。
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