歯・口の病気/親知らず

親知らず放置で死亡例も…痛み・腫れを様子見する危険性

【歯科医が解説】親知らずの腫れや痛みを放置したことによる、死亡例があります。奥歯の親知らずを抜歯したくないからと、痛みや腫れを我慢して「自然に治った」という経験がある方は要注意です。親知らず放置の危険性についてわかりやすく解説します。

丸山 和弘

執筆者:丸山 和弘

歯科医 / 歯の健康ガイド

親知らずは放置しても大丈夫? 痛みや腫れは自然治癒するのか

親知らずを放置していも大丈夫か

親知らずの腫れをそのまま我慢し続けると大変なことになる


奥歯の親知らずが腫れたり痛みが出たりしたとき、しばらく我慢していたら落ち着いたという経験がある人はいませんか? 親知らずの痛みや腫れは自然に治ると思っていたら、大変なことになってしまうかもしれません。今回は、親知らずの腫れをそのまま我慢し続けると、どこまで悪くなる可能性があるのか解説します。
 

親知らずの主な症状……うずき・腫れ・膿・痛み・口の開けにくさ

親知らず

親知らずの周囲にプラークが入り込み炎症を起こす


一般的に親知らずの炎症が奥歯に限定している場合には、次のような症状が現れます。

■奥歯の歯肉がうずく
初めは、親知らずの周囲の歯肉が炎症を起こして、うずくような感じがします。

■腫れや痛みが強くなる
はっきりと親知らずが痛いと感じるのがこの時期で、実際に親知らずの周りの歯肉が腫れたり、膿が出たりします。

■口が開きにくくなる
さらに炎症が進行すると痛みや腫れと共に、口を開きにくくなってしまいます。治療を行なっても症状が落ち着くまでに時間(1~3週間程度)がかかる事があります。

これらは歯科で治療を行う親知らずの一般的なケースです。腫れた親知らずの周辺を十分に洗浄したり、薬を飲んだりしながら、症状が落ち着くのを待って、再び症状を繰り返す前に、親知らずを抜きます。するとそれ以降、親知らずの症状には悩まされなくなります。
 

親知らず放置が原因で死亡するケースも…悪化の流れと症状

親知らずが原因で感染が起こると、体の中のいたるところにある「隙(げき)」と呼ばれる筋肉と筋肉の間にある密度の薄い組織を通じて拡がっていきます。最悪のシナリオとしては、次のようなケースが考えられます。

1. 下の親知らず周辺が腫れる
下の親知らずが腫れて痛くなるが、それまでも時間が経てば自然に治まることを繰り返していたため、今回も放置する。するとだんだんと口が開けられないほど、炎症がひどくなる。

2. 感染がの下に拡がる
顎の下の部分が明らかに膨らみ、発熱や全身の倦怠感などがひどくなる。歯科で治療を受けて処方された薬を飲んでも、症状がさらに進行してしまう場合、歯科から「口腔外科」がある病院を紹介され、入院することもある。

3. 感染が喉周辺にまで拡がる
顎の下に拡がった感染がさらに喉の脇の隙を伝わり奥まで進行する。次に首から胸に炎症が波及して、じわじわと胸の周辺に広がっていく。感染がここまで拡がると一刻を争う事態となる。

4. 感染が心臓周辺にまで拡がる
胸にまで感染すると、一気に心臓周辺にまで広がるため、死亡することもある。首から下に感染が広がってしまった場合の死亡率は20%以上とも言われている。

もちろん、このような深刻な事態になることは非常にまれです。親知らずは、痛んだり腫れたりを繰り返すことが多いため、誤った自己判断で大きなトラブルにならないよう、痛みや腫れなどの症状が出たときには、早いうちに歯科を受診するようにしましょう。

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