実際に診断した脳出血の症例

脳ヘルニア
赤で囲った白い部分が出血です。下半分に見える半月は脳室内への出血で、かなりの重症例です
私が以前に経験した脳幹部出血の症例をご紹介します。実際に経験した症例を知っていただくことでイメージが湧いてくると思います。

■ 電話中に発症した70代女性の脳出血

研修医をしていた頃、重症の脳幹部出血を診たことがあります。脳外科の無い病院でしたので、意識障害で脳疾患の疑われる患者さんの受け入れ要請があったとき、正直なところ診療を拒否したいと思ったことがあります。しかし状態があまりに悪く一刻を争うということでしたので、診断とできうる限りの緊急処置をするということで受け入れました。

患者さんは70代の女性で、電話の通話中に急に何もしゃべらなくなったということから発見されました。独居の方で、電話中でなければそのまま誰にも気づかれないままに亡くなっていたと考えられます。病院に到着した際には、かろうじて呼吸をされていましたが意識はありませんでした。意識障害の原因が必ずしも脳疾患とは限りませんので、血糖値など他の疾患が原因でないかを調べつつCT検査を行ったところ脳幹部からの出血と診断でき、すぐに脳神経外科のある病院に連絡したところ、幸いにも受け入れていただくことができました。前もって救急隊からの連絡もあったため、CT検査なども準備の上で到着を待てましたので、発症から専門医への搬送まで滞りなく搬送できましたが、それでも発症からは2時間前後かかっていたと思います。

なお、担当していただいた脳外科の先生から後日連絡をいただいたのですが、残念ながら出血の部位が悪く、手を尽くしたが翌日深夜に亡くなったということでした。私が経験した脳出血の最初の例です。当時のことは今でもはっきりと覚えていますが、私にとって大きな経験となったのと同時に、脳出血の恐ろしさを目の当たりにしました。


■ 救急現場からのメッセージ
いわゆる原因不明の死亡では、少数例を除くと心疾患が約70%、脳疾患が約30%を占めていると警察関係者の方から教わったことがあります(注:救急搬送時に死亡が確認され、原因が判明したケースでは心疾患が約4割を占めているようです)。倒れている人を見たときには、脳・心臓を第一に考えるということでしょうか。また、確実な診断法ではありませんがショック状態・意識障害を診た場合、血圧がしっかりしていれば脳疾患、血圧低下を伴えば心疾患を疑え、と某大学の教授に教わったことがあります。長時間経過した例は別として、確かにその通りだと思ったことが何度もあります。何かの参考になればと思います。


今回の事件では判断ミス、ということが強調されています。事件の経緯はメディアを通じて知ることができただけですので、どのような対応が最も適切であったのかをこの場で述べることはできません。しかし、患者さんを助けたいという想いは、すべての医者に共通する願いです。救急外来で重症患者さんを助けることは医者冥利につきる仕事ですが、どんなに手を尽くしても助けることができない重症患者さんが必ずいらっしゃいます。現場はドラマとは違いますし、ドキュメントで放映されるような内容もごく一部のものです。

亡くなられたお母さん、生まれたばかりのお子さんを抱かれたお父さんのことを思うと、心中察するにあまります。心からご冥福をお祈りいたします。


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