性を決定する性染色体は女性ではXX、男性はXYです。この染色体のX染色体の数の違いが、女性に男性よりも長い寿命をもたらす一因です。一方、X染色体が二本あることが、女性に慢性甲状腺炎のような自己免疫疾患を多く発症させる一因となります。今回はこの理由を説明します。
【女性は父親由来のX染色体と母親由来のX染色体を持ちます】
まず基本的なお話からはじめます。
顕微鏡で見て、細胞内で遺伝子を載せている基本単位を染色体といいます。人の細胞の染色体数は46本。数の男女差はありません。
そのうち性とは関係ない常染色体数は、44で男女共通です。
性を決定する性染色体は、男性はXYで、Xは母親由来です。
女性はXXで、一本のXは母親由来、もう一本のXは父親由来です。
【X染色体は女性の細胞に多様性をもたらします】
体細胞(生殖細胞は異なるので)は、常染色体の44本を使っています。男性の場合は、それに加えて性染色体のXYを使っています。
X染色体が一本の男性が個体として生きて行く事ができると言う事は、X染色体は、一本あればよいと言う事の一つの証明です。
それに対して女性の場合は、個々の細胞は二本あるX染色体のうち、片方を使わない状態にします。採血して、白血球の中の好中球という細胞を顕微鏡で観察すると、女性の好中球では、核にぶら下がって見える突起状の構造物が確認できます。この突起物は使っていないX染色体に由来します。
X染色体から見ると、各細胞について、2種類の細胞を持つ事になります。
母親由来のX染色体を使った細胞と、父親由来のX染色体を使った細胞があります。
細胞の多様性が、一つの細胞の段階で2倍ある女性は、いろいろな種類の細胞の組み合わせを考えると、男性の無限倍に近い多様性を、持っている事になります。
進化論では、近縁の種の間で多様性が高いほうが、より進化していると考えます。細胞の段階で多様性が高い女性の方が、男性より進化しているという解釈も可能です。
なおY染色体は、X染色体が、退化してできたというのが、現在の定説です。
ということは、男性は退化した女性という別の解釈も可能です。
仕事上のストレスのような身近なものから、地球の温暖化のような大きな環境の変化への適応性を考えると、多様性を持つ女性の方が、生き残るのは自然の掟です。もちろん、X染色体による体細胞の多様性に伴う適応性の強さだけで、女性の長寿を説明出来るわけではありません。
次のページは、ちょっと専門的です!
女性に自己免疫疾患が多い理由とは?>>