食と健康/食と健康の基礎知識

貧血は鉄分だけで改善する?

「山」と「川」のように、「貧血には鉄分」とお決まりの言葉がありますが、これは果たして正しいのでしょうか? また、鉄分をサプリメントで補う場合、その量は多すぎ? 少なすぎ? 素朴な疑問にお答えします。

執筆者:吉國 友和

「貧血を改善するには鉄分」と昔から言われていますが、貧血の原因によっては食事内容の改善や栄養補助食品(サプリメント)だけでは効果が期待できないこともあります。今回の50代からの健康法では、どのような貧血に対して食事療法やサプリメントが有効なのかをご紹介します。


年齢によっても異なる貧血の目安

貧血
貧血でふらふらしたり、めまいがしたり……多くの女性が経験されたことがある症状ではないでしょうか
血液中に含まれる「ヘモグロビン」は、肺から取り込んだ酸素を運搬する役割を持ちますが、このヘモグロビン量が不足する状態が貧血です。貧血になると酸素の運搬力が低下するため、全身への酸素供給を補うために心臓が過度に活動するため、結果として動悸・息苦しさを感じたり、更に悪化すると心臓の機能が追いつかなくなったりと(心不全)、全身への影響も出現するようになります。

ヘモグロビン濃度は性別・年齢によっても変動があります。出生直後は性別による差もなく、最も高い状態です(18g/dl)。その後は急速に低下しますが(生後6ヶ月で12~13g/dlぐらい)、思春期になると成人の基準値(男性16±2g/dl、女性14±2g/dl)に近づきます。この頃から性別によってヘモグロビン量に差が生じるようになります。これは男性ホルモンが赤血球産生を促すためです。このため、男性では20代にヘモグロビン濃度がピークとなりますが、女性の場合には思春期がピークとなり、20~30代には一時的に低下傾向となります。ホルモンのバランスの変化の生じる閉経期以降では男女差が少なくなり、80才を超える頃のヘモグロビン濃度は同じぐらいになります(男女ともに12~13g/dlぐらいです)。

このような変化がありますので「貧血」と判断するヘモグロビン濃度は、成人男性で13~14g/dl未満、成人女性で12g/dl未満ですが、体内の水分量の異なるご高齢の方や妊婦さんでは11g/dl未満が目安となっています。なお、小児では更に細かく年齢によって基準が異なります。


栄養補助食品(サプリメント)が有効な貧血の種類

貧血の治療には、特殊な治療(骨髄移植・脾臓摘出・薬物療法)と対症療法(輸血)がありますが、前者のうち栄養補助食品が有効な貧血と、それらに対する有効な栄養素は次の通りです。
  • 鉄欠乏性貧血……鉄
  • 巨赤芽球性貧血(原因:胃全摘出術後、小腸疾患、悪性貧血など)……ビタミンB12、葉酸
  • 鉄芽球性貧血の一部……ビタミンB6
巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)と鉄芽球性貧血(てつがきゅうせいひんけつ)に関しては更に複雑な説明となってしまいますので、今回は一般的な鉄欠乏性貧血についてご説明します。日常的によく知られている病気ですが、体内の鉄の出納などを考えてみると、非常に奥の深い病気であることがわかってきます。


次のページでは年齢によっても異なる鉄分の必要量についてご紹介します。
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