ぎっくり腰の治療方法
つらいぎっくり腰でも、仕事は休めません
寝返りを打つこともできず、トイレもつらい、だけど、仕事は休めない。一度ぎっくり腰を経験された方は、「また起こすんじゃないか」と、いつも腰を気にしているものです。今回は、こんなつらいぎっくり腰から、皆様が一刻も早く解放されるよう、病院で行う専門医の治療方法をご紹介します。
ぎっくり腰になったら
ご自分で動ける方も、全く痛みで動けない方も、まずは病院を受診しましょう。ぎっくり腰の場合、早い段階で病院の治療を受けることで、治療期間を短縮し、再発や腰痛の慢性化を防げます。病院で行う、ぎっくり腰の治療方法は3つです。
・ 痛み止めなどの薬物療法
・ コルセットを使った装具療法
・ 神経ブロック注射療法
ぎっくり腰の薬物療法の効果・副作用
ぎっくり腰の原因は様々ですが、腰に急性炎症が存在することは確か。よって、ぎっくり腰になって2週間は、しっかりと炎症を抑え、神経の腫れを取り除くために、痛み止め(非ステロイド性消炎鎮痛剤、NSAIDs)や筋肉をほぐす薬を飲みます。痛み止めには、速効性があり炎症を抑える力が強い薬や、ゆっくりと長時間効く慢性痛向きの薬など、いろいろな種類があります。ぎっくり腰の場合には、激しい痛みと強い炎症が存在するので、痛み止めの中では効き目が早く、鎮痛効果が高いタイプの薬が選択されます。しかし、このタイプは鎮痛作用が強い半面、胃腸障害などの副作用が多いことが問題。例えば、代表的な痛み止めのボルタレン錠では、胃のむかつき・不快症状が9.43%に起こります。
適切な治療を受けず、痛み止めだけで痛みを我慢していると、ぎっくり腰の強い痛みをコントロールできないため、つい大量に飲んでしまったり、長期間痛み止めを服用することがあります。その結果、痛み止めの乱用で胃炎や十二指腸潰瘍、腎臓機能障害などを引き起こす可能性も。最近では、鎮痛効果が高いのに副作用は少なく、速効性のある痛み止めもあります。「COX-2選択的阻害剤(コックスツーせんたくてきそがいやく)」と呼ばれる薬で、セレコックスやロルカムなどが代表です。胃腸に影響を与えにくいこの薬を上手に使うことで、ぎっくり腰の強い炎症も、しっかりと抑えることができるようになっています。
ぎっくり腰では、自分に合った薬を、整形外科、麻酔科、ペインクリニック科で選んでもらうことが大切。胃が弱い方や十二指腸潰瘍を起こしたことのある方は、専門医に相談しましょう。また、痛み止めで喘息を起こしたことがある方も、必ず医師に伝えましょう。
ぎっくり腰の装具療法の特徴・注意点
ぎっくり腰で薬が効かない時、あなたならどうしますか?
しかし、一見無害なコルセットですが、腰痛症の場合、思わぬ落とし穴があります。それでは、コルセットの副作用について説明しましょう。
一度ぎっくり腰を起こし、腰痛症になると、多くの方がしばらくの間コルセットを着けるようです。ところが腰痛が軽減して炎症が治まった後も、コルセットを着けたまま生活を続けてしまうことがあります。なぜなら、ぎっくり腰を起こす方は、日ごろから、腰に不安を抱えていることが多く、コルセットを着用することで、仕事も家事も楽な力で長時間、動作することができるからです。
では、このコルセット生活を続けているとどうなるのでしょうか? 実は、近い将来、再びぎっくり腰を起こしたり、慢性腰痛症を悪化させる可能性を高めます。理由は、コルセットに依存することで自分の腹筋や背筋が衰えてしまい、筋肉で骨格を支えきれなくなるため。急性期にコルセットを装着することは、非常に効果的な治療方法と言えます。しかし、ぎっくり腰後の長期間のコルセット装着は、医師と相談しながら、慎重に行う必要があるのです。
ぎっくり腰の神経ブロック療法
ぎっくり腰は、早めに専門医の治療を受け、炎症を広げないことが重要です
では、ぎっくり腰の場合に、ペインクリニック科で行われる、腰部硬膜外ブロック注射治療について、具体的に説明していきましょう。
■ 特徴
ぎっくり腰は、神経ブロック注射が最も効果的。1週間に1~2回行います。痛い神経の近くまで、薬が確実に届くので効果が高く、ぎっくり腰の場合、1~2回のブロック注射で、症状が取れてしまう方も多いのです。ペインクリニック科や麻酔科の、外来通院で行われます。
■ 方法
治療ベッド上で消毒を行った後、腰の神経やその周囲に注射針を進め、薬液を注入します。まず、予防接種に使う注射針(直径0.7mm)より細い針(直径0.5mm)で痛み止めを注射し、皮膚の痛みを取った後、太さ約0.9mmの針でブロック注射を行います。進める針の深さは、体格によって3cmから5cmほど。注入する薬液は、痛み止め作用のほか、筋肉を緩める働き、血流を改善させ、神経の腫れを取る効果があります。症状によって、注入量は、5mlから10mlと、差があります。
■ 副作用
針を刺す痛みが、主な副作用と言えます。しかし、ぎっくり腰を起こしている最中は、その腰痛のため、針を刺した痛みが感じにくくなっています。ご安心ください。重篤な副作用は、針穴からの感染、出血、神経障害です。これらの副作用は、報告にもよりますが、0.02%~0.001% 以下であり、専門医の治療を受けることで、さらにその可能性は低くなります。
■ 費用
ブロック注射治療は、保険適用です。3割負担の方で、初診時には3600円ほどで神経ブロック注射治療が受けられます。これに点滴治療や検査料金、内服治療薬やシップ薬の処方料金が別途必要。それでも、通常、合計6000円以内で治療が受けられます(詳しくは、各病院にお問い合わせください)。
■ 時間
ブロック注射後は、約30分間、ベッド上安静が必要です。また、ご高齢の患者さまや重症な症状の患者さまの場合、安静時間が1時間以上になる場合があります。時間にゆとりを持って、治療を受けましょう。
ぎっくり腰で悩んでいる時、最も望むことは「早くこの痛みを取って、普通の生活を取り戻したい」ということ。ぎっくり腰の痛みの元となる炎症を抑え、腰の血流の改善と神経の腫れを取る神経ブロック注射は、痛みを早急に取り除き、効果的に治癒を早める可能性があります。ぎっくり腰を起こして、安静・内服治療だけでは満足いかない場合、治療期間を短縮して一刻も早く痛みから解放されたい場合には、一度、ペインクリニック科を受診してみてはいかがでしょうか?