「痛み」の定義

痛みのメカニズムと痛み止めの作用、副作用を説明します

痛みは,傷や心が絡み合って脳が感じています

「痛み」は単純な反射的感覚ではなく、心の動きや情動を伴った苦しみ、不安など、ヒトが「感じる」体験だと考えられています(国際疼痛研究学会(International Association for the Study of Pain ; IASP))。

ヒトは痛みを感じることで、自分の体を正常に維持し、細菌などの敵から自己を守っています。しかし、痛みの原因は単なる炎症の反射ではなく、ヒトを取り巻く様々な環境因子や神経の反応で成り立っているのです。よって、炎症を抑えることで痛みを取るだけの一般的な痛み止めでは、ヒトが「感じている痛み」に、全く効果がない場合があります。その結果、効かない痛み止めを大量に飲んでしまい、その副作用の可能性を増加させるという、悪循環に陥ってしまう可能性も! 痛み治療は、痛みの原因別に応じた治療が必要であり、痛み止め、神経ブロック注射治療、抗うつ剤、医療麻薬、理学療法などを上手に組み合わせた、総合的な治療方法を行う必要があるのです。

今回は、痛み治療の基礎となる「痛み」のメカニズムを説明し、皆さんに一番馴染みのある炎症を抑える痛み止めについてお話します。痛みの原理を理解することは、積極的に痛み治療に取り組むヒントになり、治療成績を向上させる可能性があります。上手な痛み止めの使い方ができるようになれば、痛み止めの乱用を防ぎ、その副作用を減少できます。

痛みのメカニズム・役割

痛みの原因は、大きく以下の4つに分けられます。

■ 傷から末梢神経を通じて脳へ伝えられる痛み
膝をすりむいたり、熱いヤカンに触れたときの痛みなど。外傷。

■ 末梢神経そのものの痛み
帯状疱疹後神経痛、糖尿病によるシビレや痛みなど。外傷はないが、神経そのものが原因で起きる。

■ 心因性の痛み
神経や体には問題があまりないのに感じる痛み。心理的な問題、社会的要因など、多くの要素で成り立っている痛み。

■ 脳や脊髄の痛み
交通事故などで、脳や脊髄が損傷して感じる痛み。

一般的な「痛み」は、ほとんどが、傷から末梢神経を通じて脳に伝わった痛みです。まずは、痛み止めがなぜ効くかを理解するために、痛みの伝わり方について理解しましょう。
痛みの伝わり方、情報伝達路

なぜ、ヒトは痛みを感じるのでしょうか?

例えば、ケガをした場合、最初に皮膚にある痛みを感じるセンサーが反応します。このセンサーは末梢神経線維の末端に存在し、切り傷や針で刺された刺激、45℃以上の熱さ、15℃以下の冷たさ、酸やアルカリなどの化学に反応します。このセンサーが感じた情報は、末梢神経を通って脊髄神経に伝えられ、最終的に、脳で「痛み」として認識されます。脳はその情報から、痛みの部位、鈍痛・鋭い痛みの質、痛みの強さを判定します。画ビョウを間違って踏んだ時に、反射的に足をはねのける逃避行動を起こしたり、鈍く重い痛みを苦々しく感じたりすることも、この情報伝達がもととなっています。

次に、「痛い」と感じている傷の場所では、どういう現象が起こっているのでしょうか?

1. 傷や熱、酸・アルカリの刺激を受けると、細胞が傷つく。
2. 傷ついた細胞から、カリウムが放出されます。それがきっかけとなり、痛みを感じやすくするプロスタグランジンやロイコトリエンといった、体の働きを調節する物質が作られる。
3. 神経からは、サブスタンスPという痛み増強物質が放出されます。サブスタンスPによって、傷の痛みや腫れ、赤みなどが増強。
4. また、血液中の肥満細胞からはセロトニン、血小板からはヒスタミンといった、さらなる痛み物質が誘発。
5. 痛みセンサーはますます興奮し、痛みが拡大。

拡大した「痛み」情報は、体の損傷や不具合を脳に伝え、その対策を立てるよう脳に促します。痛みがある時には、自然と安静を取り、冷やして炎症を抑えようとするのは、痛みを感じ取った脳が傷を癒すアクションを起こしているからなのです。

痛みのメカニズムがご理解頂けたでしょうか? この痛みの原理、痛みのメカニズムからみた、痛み止めの作用機序をお話します。